長谷川清

長谷川清とは

長谷川清（はせがわ きよし）は、1883年（明治16年）に福井県で生まれ、1970年（昭和45年）に没した日本の海軍軍人です。最終階級は海軍大将で、第18代台湾総督も務めました。その生涯は、激動の時代と重なり、軍人としての卓越した能力と、人間としての温かさを併せ持つ人物として知られています。

軍人としてのキャリア

長谷川は、福井中学校在学中に海軍を志し、海軍兵学校に入校しました。卒業後は、日露戦争に戦艦「八島」乗組として参加し、その後「三笠」に乗り組み日本海海戦にも参戦。東郷平八郎大将の背後に描かれた測距儀の上から軍帽だけが見えているのが長谷川です。

水雷専攻の士官として、水雷学校教官などを務め、海軍大学校卒業後には第一次世界大戦にも従軍しています。その後、アメリカ駐在武官として勤務し、アメリカの対日感情が悪化する中で、毅然とした態度で任務を遂行。帰国後は、艦長や戦隊司令官を歴任しました。

日中戦争勃発時には、支那方面艦隊司令長官として、中国陸海軍の首脳陣と会談し、その礼節ある態度で多くの中国将官を感服させました。第二次上海事変では、アメリカ砲艦誤爆事件に対し、迅速に米英両国に謝罪するなど、国際的な視野も持ち合わせていました。

台湾総督として

1940年（昭和15年）には、台湾総督に就任。当初は予備役編入の予定でしたが、南進政策を進める海軍の意向により現役のまま総督となりました。総督在任中は、皇民化運動の強化や初等普通教育の義務化、台北帝国大学予科の設置など、教育普及に熱心に取り組みました。

人物像

長谷川は、温厚で度量が広い人物として知られています。決断が早く、思い立ったら即実行する一方で、対話を重視し、敵対する相手とも徹底的に話し合う姿勢を持っていました。また、相手の面子を立てることも辞さず、その人望は厚かったと言われています。海軍内でも、その能力と人格は高く評価されており、多くの人物から尊敬を集めました。

戦後と晩年

終戦後、長谷川はA級戦犯容疑で一時収監されましたが、連合国側の判断により無罪釈放となりました。その後、新海軍再建委員会の顧問などを務め、1970年（昭和45年）にその生涯を閉じました。孫には、映画監督・脚本家の実相寺昭雄がいます。

長谷川清は、激動の時代を生き抜いた海軍軍人であり、その生涯は、軍人としての功績だけでなく、人間としての魅力にも満ち溢れています。その名は、歴史の中に深く刻まれています。

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