豊田稔

豊田 稔（とよだ みのる）

豊田 稔は、1944年6月5日に茨城県で生まれた日本の政治家です。特に北茨城市長として、通算6期という長期にわたり市政を担いました。その政治キャリアは、実父である豊田実氏も北茨城市長を3期務めた家系を引き継ぐものです。

初期経歴と市政への参画

地元の北茨城市立富士ヶ丘小学校を卒業後、日本大学文理学部で学びましたが、後に中退しています。政界に進出する以前は、実業家としても手腕を発揮しました。北茨城自動車学校を含む6社の経営に携わり、「豊友グループ」の総帥として地域経済にも関与していました。

1981年3月、北茨城市議会議員選挙で初当選を果たし、政界での活動を開始します。そして1986年10月、当時の北茨城市長であった柴田章氏の死去に伴い行われた市長選挙に挑戦しますが、元助役の松崎龍夫氏に惜しくも敗れ、次点で落選しました。

市長初当選と政治資金問題

捲土重来を期し、1990年11月に行われた北茨城市長選挙に再び立候補しました。この選挙では、塚原俊平氏や合化労連からの支援を受け、現職の松崎市政が進めたゴルフ場開発を「10場ものゴルフ場を認めたのは許せない」と強く批判しました。梶山静六氏の支援を受けた松崎氏との一騎打ちを大差で制し、念願の市長に初当選しました。同年12月14日に北茨城市長に就任しましたが、当選直後の11月30日には、豊田氏を支持していた市議会議員2名が公職選挙法違反の容疑で逮捕されるという出来事がありましたが、豊田氏自身が司直の手が及ぶことはありませんでした。

1994年11月には、市長として再選を果たしました。同年12月6日には、東京都千代田区の不動産会社グランディーが北茨城市内で計画していたゴルフ場開発に関連し、前市長の松崎氏が収賄容疑で逮捕されるという衝撃的な事件が発生しました。松崎氏は12月18日、東京拘置所内で自ら命を絶ち、翌日死亡が確認されました。

汚職事件と失脚

そして1995年3月、前市長の逮捕と同じく、北茨城市内のゴルフ場開発に絡み、豊田氏自身も収賄容疑で逮捕される事態となりました。豊田氏は、1990年の市長当選直後の12月下旬、支援者と共謀し、暴力団幹部を仲介役として支援者宅で前述の不動産会社グランディーから現金5,000万円を受け取ったとされました。さらに、1991年2月中旬にも、グランディーから暴力団幹部宅で現金1億円を受け取ったとされました。これら合計1億5,000万円の収賄容疑で起訴された豊田氏は、同年5月21日に市長を辞職しました。

裁判では「事実無根」として全面的に容疑を否認し、「検察官は法廷で私の目すら見られない」と述べるなど、強気の姿勢を崩しませんでした。しかし、最終的には最高裁判所で懲役2年6月、追徴金7,500万円の実刑判決が確定し、その刑に服することとなりました。

市長への返り咲きとその後

服役後、再び政界への復帰を目指した豊田氏は、2007年6月10日に行われた北茨城市長選挙に立候補しました。この選挙では、民主党の支援を受けた前市議の滑川光仁氏や自営業の松本健一郎氏ら2名の候補と争い、10,874票を獲得して当選を果たし、一度は失脚した市長の座に返り咲きました（滑川氏9,347票、松本氏6,094票、投票率65.67％）。同年6月18日、再び北茨城市長に就任しました。

その後も豊田氏の強さは揺るがず、2011年の市長選では自民党と公明党の推薦を受け、通算4期目の当選を果たします。2015年5月には通算5期目の当選を決め、同年6月には茨城県市長会の会長にも就任しました。

2017年5月10日、茨城県市長会の会長として、数ヶ月後に迫った茨城県知事選挙において現職の橋本昌氏への推薦を決定し、豊田氏自身も橋本氏の選挙対策本部長に就任しました。茨城県町村会も橋本氏の推薦を決めていましたが、8月2日には高萩市長、古河市長、ひたちなか市長、笠間市長、坂東市長、利根町長の6名の市町村長が対立候補の大井川和彦氏の支援を表明しました。これに対し豊田氏は、報道陣の取材に「機関決定をしたのに、なぜあえて表明までするのか」と不快感をあらわにしました。知事選挙は8月27日に執行され、橋本氏は落選しました。その結果を受け、翌8月28日、豊田氏は「知事選敗北の責任を取る」として、茨城県市長会長職の辞意を表明しました。

波乱の政治人生を経て、2019年6月には通算6期目となる北茨城市長選挙での当選を果たし、長期にわたり北茨城市政のトップを務め上げました。

（脚注、外部リンクは省略）

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