豚流行性下痢

豚流行性下痢（PED）について

豚流行性下痢（Porcine Epidemic Diarrhea、略称PED）は、豚及び猪に感染するウイルス性の病気で、豚流行性下痢ウイルスによって引き起こされます。このウイルスは、コロナウイルス科に属するもので、家畜伝染病予防法においては届出伝染病とされています。

原因

豚流行性下痢ウイルスは、プラス一本鎖RNAを持つコロナウイルスに分類され、直径120〜160nmのエンベロープを持つ球形のビリオンを形成します。このウイルスは主に小腸の粘膜上皮細胞で増殖します。主な感染経路は、糞便を介した経口感染ですが、汚染された器具や設備を通じての感染も確認されています。

症状

感染した豚には、食欲不振や元気消失、嘔吐、水様性下痢といった症状が現れます。特に、10日齢以下の乳飲み子豚は脱水症状を引き起こし、ほぼ100%が死亡してしまいます。年齢が上がるにつれ症状は軽減するものの、母豚では食欲不振が泌乳の減少や停止につながり、結果として哺乳豚の死亡リスクが高まります。病変は小腸に特有であり、小腸壁の薄化や小腸絨毛の萎縮が観察されます。

診断

ウイルスの分離は培養細胞で複雑ではありますが、一部の株はVero細胞で培養が可能です。診断にあたっては、免疫組織化学的な染色や中和試験を通じた抗体検出も行われます。臨床現場での確定診断には、RT-PCR法を用いて嘔吐物や糞便中からウイルス遺伝子を検出し、陽性であれば免疫染色による抗原確認に進むという手法が取られます。

予防

この病気の発生や拡大を防ぐためには、衛生管理が特に重要です。常在する地域では生ワクチンの接種も推奨されています。これにより、感染が広がるリスクを軽減することができます。

大規模な流行例

PEDは2013年10月に沖縄で初めて確認され、日本国内での流行が続いています。2014年4月時点で、全国33県において83,325頭の感染が記録されており、日本全体の豚の総数は約970万頭です。この流行は福島や宮崎の農場でも確認され、多くの農家に影響を与えています。また、2014年にはアメリカでの大規模な流行も報告され、国内の豚肉供給量が最大4%減少すると予測されました。特に、2013年7月から2014年4月までにアメリカ国内で死亡した豚は700万頭に達し、これは国内の豚6300万頭の約11%に相当します。

参考文献

• - 鹿江雅光、新城敏晴、高橋英司、田淵清、原澤亮編 『最新家畜微生物学』 朝倉書店 1998年
• - 清水悠紀臣ほか 『動物の感染症』 近代出版 2002年

関連項目

• - 家畜伝染病予防法

豚流行性下痢は豚の健康と農業経済に深刻な影響を及ぼすため、早期の発見と適切な対策が求められています。

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