豚積車

豚積車（ぶたづみしゃ・とんせきしゃ）

豚積車は、日本国有鉄道（国鉄）によって運用されていた有蓋貨車の一種で、その用途は主に豚や羊など、背の低い家畜を生きたまま輸送することに特化しています。これらの家畜は通常、豚肉の消費地から離れた養豚場で育てられており、新鮮な精肉を提供するためには消費地近くでの屠殺が求められました。こうした需要に応えるため、この貨車は製造されました。

特徴

豚積車のデザインは、家畜車に似ていますが、特に豚積車は二段構造の床面を持ち、より多くの豚を積み込むことができるのが大きな利点です。輸送中の豚の快適さと健康を考慮し、車両の端には付添人室が設けられ、給水や給餌のために作られています。この付添人室には水タンクが備えられており、夏季には豚に水をかけることができるようになっています。

更に、豚積車の側面は通風をよくするために扉を除いてはすかし張りになっており、逃走を防ぐために隙間には鉄棒が取り付けられています。冬季の寒さから家畜を守るために、窓は閉じることができる蝶番式の戸があります。また、床板は鋼製ですが、廃棄物による腐食を防ぐためにアスファルトが塗布されており、なおかつ中央に向かって傾斜が付けられ、排水口が設けられています。

歴史

大正時代には、豚は籠に入れられ家畜車で運ばれていましたが、輸送効率の向上が求められ、1928年にワフ20500形の改造によって豚積車の運用が開始されました。最初は家畜車に分類されていましたが、その後の規則改正により豚積車と名付けられ、ウ1形として運用されました。以降も改造が続き、1932年にはウ100形、1934年にはウ200形が製作されました。

戦後には、1950年にウ300形が、1957年にはウ500形が製造され、ウ300形もその後改造されてウ500形に編入されるなど、技術は進歩していきました。しかし、電化製品の普及に伴い、冷凍倉庫や冷蔵倉庫の整備が進み、家畜を生きたまま運ぶニーズは次第に減少していきました。肉の鮮度を保ちながら家庭への長距離輸送が可能になったことで、豚などが生産地で屠殺される割合が増え、昭和40年代以降には需要が大きく減少しました。

最終的に1974年、ウ500形が廃車になると、豚積車はその歴史を終えることとなりました。このように、豚積車は一時代の流通システムにおいて重要な役割を果たしていましたが、現代の輸送方法の変化により姿を消していったのです。

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