負け犬

「負け犬」とは

「負け犬」という言葉は、元々は喧嘩に負けて逃げる犬を指す言葉です。そこから転じて、勝負に負けた人や、ビジネスの世界では、成長性も収益性も低い事業のことを指すようになりました。犬の社会における主従関係から、服従を強いられる存在や、戦う前から負けを認めているような存在を指す、強い侮蔑を含む言葉として使われます。

また、「負け犬の遠吠え」という慣用句もあります。これは、弱い犬が安全な場所でだけ大きく吠える様子から、立場的に弱い人が負け惜しみを言うことを揶揄する言葉です。

負け犬ブーム

2003年に酒井順子が発表したエッセイ『負け犬の遠吠え』は、「30歳以上の未婚で子供がいない女性は負け犬」という自虐的な表現を用いたことで、社会現象を巻き起こしました。このエッセイは、結婚や出産を女性の幸せとする価値観が根強い一方で、仕事や自己実現を追求する女性が増加している社会状況を背景に、多くの女性たちの共感を呼びました。

当時、結婚適齢期を過ぎても結婚しない女性は、社会的に「負け組」と見なされる風潮がありました。しかし、実際には、仕事で成功を収め、経済的に自立している女性も多く存在していました。彼女たちは、自らを「負け犬」と自嘲することで、社会の固定観念に挑戦し、新たな価値観を提示しようとしたのです。

「負け犬」という言葉は、一種の自虐的なユーモアを伴って社会に受け入れられ、2004年には流行語大賞のトップテンにも選ばれました。このブームは、女性の生き方や幸福に対する多様な考え方を社会に浸透させるきっかけとなりました。

恋愛面における「負け犬（女性）」を扱った作品

「負け犬」という言葉がブームになった背景には、恋愛や結婚における女性の葛藤を描いた多くの作品も影響しています。これらの作品は、従来の結婚観にとらわれず、自立した女性の姿を描き、多くの人々の共感を呼びました。

コミックス・ドラマ『だめんず・うぉ〜か〜』（作：倉田真由美、扶桑社）：ダメな男にばかり惹かれてしまう女性の恋愛を描いた作品。
エッセイ・ドラマ『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』（作：ジェーン・スー、ポプラ社）：結婚できない女性たちの心理を描いたエッセイ。
コミックス『東京タラレバ娘』（作：東村アキコ、講談社）：結婚を焦るアラサー女性たちの日常を描いた作品。
小説・映画『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ（作：ヘレン・フィールディング）：独身女性の恋愛や仕事を描いた作品。
ドラマ『アリー my Love』:弁護士として働く女性の恋愛とキャリアを描いた作品。
映画『カイロの紫のバラ』（脚本：ウディ・アレン）：現実と映画の世界が交錯するファンタジー作品。

関連事項

「負け犬」という言葉は、様々な状況や文脈で使用されます。

賃金奴隷: 経済的な束縛から抜け出せない状況を指す言葉で、負け犬と関連付けられる場合があります。
かませ犬（アンダードッグ）: 勝ち目のない相手に立ち向かう存在を指す言葉で、負け犬と同じく、弱者を表す言葉として使われます。
護送船団方式: 競争を避け、全体で足並みを揃えて進む組織運営の方法。負け犬が生まれる背景として語られることもあります。
酸っぱい葡萄: 手に入らないものを「どうせ大したものではない」と否定する心理を表す言葉で、負け犬の心理を説明する際に引用されることがあります。
アンダードッグ効果: 負けている側を応援したくなる心理。アンダードッグとは、負け犬を意味する言葉でもあります。
敗犬女王（負け犬女王）: 負け犬と自嘲しながらも、自身の生き方を肯定する女性を指す言葉。

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