貯蓄銀行

貯蓄銀行とは

貯蓄銀行は、主に個人の貯蓄を預かることを目的とした金融機関です。19世紀のヨーロッパで、庶民の生活安定のために節約を奨励する公益的な金融機関として広まりました。設立主体は、社会意識の高い個人や公的機関など様々で、郵便貯金もその一つです。各国の歴史的背景や制度によって、多様な発展を遂げています。

起源

貯蓄銀行の起源は18世紀のヨーロッパに遡ります。

フランス：1765年にBrumathで設立されたという主張があります。
イギリス：1697年に貯蓄銀行のアイデアが提案された記録があります。最初の貯蓄銀行は1799年に設立され、1861年には郵便貯金が開始されました。
ドイツ：1778年にハンブルクに設立されました。
スイス：1787年にベルンに設立されました。
アメリカ：1816年12月13日にBoston Provident Savings Institutionが設立されました。

各国の現状

ヨーロッパ：個人や中小企業向けの預金、融資、保険などの金融商品を提供し、地域に根ざした業務を行っています。
スペイン：貯蓄金庫 (Caja de ahorros) が、商業銀行と並ぶ規模に発展しています。地方政府が運営する非営利財団であり、利益は地域社会の文化活動や奨学金などに還元されます。協同組合的なカハ・ルラル (Caja Rural) も存在します。
アメリカ：貯蓄貸付組合 (savings and loan association) や相互貯蓄銀行が相当します。
フランス：ケス・デパーニュとバンク・ポスタル（郵便貯金銀行）があります。
イギリス：1985年にTrustee Savings Bankが統合され、1995年にロイズ銀行と経営統合。郵便貯金はNational Savings and Investmentsとして存続しています。
ニュージーランド：1987年の金融制度改革で銀行種別がなくなり、登録銀行制度へ移行。郵便貯金はオーストラリア・ニュージーランド銀行へ売却後、2002年にキーウィ銀行が設立されました。
ソ連：労働貯蓄金庫（ズベルカッサ）があり、現在はロシア貯蓄銀行として存続しています。
韓国：相互信用金庫が相互貯蓄銀行に改称。SBI貯蓄銀行が最大手となっています。

日本の貯蓄銀行

日本では、1880年に東京貯蔵銀行が開業したのが始まりです。1893年に法制化され、20世紀初頭に隆盛を迎えましたが、その後普通銀行への転換・合併が進み、1949年に消滅、1981年に法制上廃止されました。欧米の制度を参考にしたものの、実際には営利目的の強いものでした。生活安定のための公益的な金融機関としては、郵便貯金がその役割を果たしました。

歴史

明治時代：金融業への規制が少なく、様々な金融業者が誕生。1890年に銀行條例および貯蓄銀行條例が公布され、貯蓄銀行の制度が定められました。これにより、1口5円以下の小口預金を取り扱う金融業者が貯蓄銀行となりました。
大正時代：第一次世界大戦後の恐慌により多くの貯蓄銀行が破綻。1922年に貯蓄銀行法が制定され、業務内容が厳しく規制されました。多くの貯蓄銀行が普通銀行へ転換しました。
昭和時代：1943年に普通銀行の貯蓄銀行業務兼業が認められ、吸収合併が進みました。戦時体制下では大手貯蓄銀行が日本貯蓄銀行として合併しましたが、戦後に協和銀行（現在のりそな銀行）となりました。1949年に最後の貯蓄銀行が普通銀行へ転換し、貯蓄銀行は消滅しました。

主要金融商品

普通預金：貯蓄銀行固有の商品で、普通銀行の特別当座預金と統合され、現在の普通預金となりました。
据置貯金：定期預金に相当します。
定期積金：一定期間に掛金を払い込み、満期に給付金と給付補填金を受け取る商品です。

参考文献

迎由理男『郵便貯金の発展とその諸要因』国連大学人間と社会の開発プログラム研究報告、1981年。
岡崎哲二『銀行業における企業淘汰と経営の効率性：歴史的パースペクティブ』特定領域研究「制度の実証分析」、2001年。

関連項目

銀行
* 郵便貯金制度

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