貯蔵穴

貯蔵穴とは

貯蔵穴は、古代の人々が食料を保存するために地面に掘った穴のことです。土坑の一種であり、特に日本では縄文時代から弥生時代にかけて広く利用されました。

貯蔵穴の歴史

旧石器時代

旧石器時代の貯蔵穴の発見例は非常に少ないですが、新潟県長岡市の荒屋遺跡や静岡県磐田市の広野北遺跡などで、オニグルミなどの種子が貯蔵されていた土坑が見つかっています。

縄文時代

縄文時代には、ドングリなどの堅果類を貯蔵するために貯蔵穴が盛んに利用されました。貯蔵穴は通常、竪穴状で円形をしており、断面は入口が狭く底部が広いフラスコのような形状をしています（フラスコ状土坑）。

貯蔵場所は、低地の湿地と高地の乾燥地に大別できます。低地の湿地では、アクの強い堅果類を水に浸してアク抜きをするために利用され、高地の乾燥地では、アクの少ない堅果類をそのまま保存するために利用されたと考えられています。

弥生時代

弥生時代になると、水稲耕作が普及し、米が主要な貯蔵対象となりました。米は穂首を刈り取った稲モミの状態で貯蔵されました。貯蔵穴の形態は縄文時代と同様に竪穴状で円形が基本ですが、初期には方形や長方形のものも存在しました。断面はフラスコ状で、屋根を支えるための柱穴が見られることもあります。

弥生時代の貯蔵穴からは、大量の土器が出土することがありますが、実際に貯蔵に使われた土器が出土することは稀です。多くの場合、貯蔵穴としての役目を終えた後にゴミ捨て場として再利用されたため、壊れた土器が大量に出土すると考えられています。稲モミを直接貯蔵穴に敷き詰めた植物の葉の上に置く例もあり、必ずしも土器などの容器に入れて貯蔵していたわけではありません。

弥生時代中期中葉以降になると、稲モミの貯蔵施設は掘立柱建物（高床倉庫）へと移行し、貯蔵穴は西日本ではほとんど利用されなくなりました。

貯蔵穴からわかること

貯蔵穴は、当時の人々の食生活や技術を知る上で重要な手がかりとなります。貯蔵されていた食料の種類や量、貯蔵方法などから、当時の人々の生活様式や文化を垣間見ることができます。

関連項目

* フラスコ状土坑

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