貸し農園

貸し農園：都市と農業をつなぐ多様な空間

貸し農園は、都市住民が気軽に農業を体験できる場として、近年注目を集めています。野菜や花を育てるレクリエーション、高齢者の健康維持、子どもの食育や情操教育など、利用目的は多岐に渡ります。企業の福利厚生やCSR活動の一環として活用されるケースも増加しています。ドイツのクラインガルテンになぞらえるように、日本では市民農園、レジャー農園、体験農園、レンタル農園など、様々な名称で呼ばれています。

歴史：戦後復興から現代へ

日本の貸し農園の歴史は古く、1924年（大正13年）に京都園芸倶楽部が設立した市民農園に遡ります。しかし、第二次世界大戦とその後の農地制度の変遷により、一時衰退しました。

本格的な復活は昭和40年代後半から。1969年には神戸市と板橋区に市民農園が開設され、都市部を中心に広がりを見せ始めました。1974年には全国で163農園、1987年には2718農園と急増。1989年には「特定農地貸付に関する農地法等の特例に関する法律」が制定され、法的な整備も整い、貸し農園の普及が加速しました。翌年には「市民農園整備促進法」が制定され、附帯施設の整備も可能となりました。

開設方法：多様な形態

貸し農園の開設方法は多様化しています。地方公共団体や農業協同組合、農家などが運営する市民農園、特定農地貸付法に基づく農園、ビル屋上や公園などの農地以外を利用した農園、農業体験農園などがあります。それぞれ運営形態やサービス内容が異なります。

サービス：利用者のニーズに対応

サービス内容は、運営主体や利用形態によって大きく異なります。地方公共団体などが運営する市民農園では、15～30㎡程度の区画を年間1万円前後で提供するケースが多く、栽培指導などのサービスは限定的です。

一方、農業体験農園では、年間3～5万円程度の料金で、講習会や種苗、農機具の貸し出し、休憩施設などのサービスが充実していることが多いです。2010年頃からは民間企業による屋上菜園なども増加。年間10万円以上の料金で、5㎡程度の区画を提供するなど、既存の農園とは異なる形態も生まれています。これらの農園では、草取りや害虫駆除などの作業代行や、収穫物の宅配などの手厚いサービスが提供されています。

貸し農園を取り巻く環境

近年、都市化の進展や食への関心の高まりを背景に、貸し農園の需要は増加傾向にあります。一方で、農地の確保や運営管理、安全性の確保などの課題もあります。持続可能な貸し農園運営のためには、地域住民や行政、事業者間の連携が不可欠です。また、多様なニーズに対応できるよう、サービス内容の多様化や質の向上も求められます。

まとめ

貸し農園は、都市農業の一形態として、都市住民の生活に潤いを与え、農業への理解を深める役割を担っています。今後も、社会情勢の変化を踏まえながら、その存在意義を高めていくことが期待されます。

関連キーワード

家庭菜園、クラインガルテン、コロニヘーヴ、都市農業

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