市民農園

市民農園：都市と農村をつなぐ緑の空間

市民農園は、都市住民が小規模な農地を借りて、野菜や果物、花などを非営利的に栽培する活動、またはそのための農地を指します。古くは大正時代から存在し、レジャー農園やふれあい農園などとも呼ばれています。近年では、特定農地貸付法や市民農園整備促進法といった法的根拠に基づくものと、農地の貸借権を伴わない農園利用方式によるものの3種類に分類されます。

市民農園の起源と歴史

市民農園の概念は、欧米のクラインガルテンから導入されました。日本における初期の事例としては、1920年代後半に大阪市農会が設立した湯里農園や山口農園などが挙げられます。東京では、1930年代に大泉市民農園や羽沢分区種芸園などが開設されましたが、これらの初期の市民農園は1950年代までに廃止されています。

戦後、高度経済成長期における都市化の進展に伴い、大都市圏では農地が急速に宅地化されました。都市計画法の施行により市街化区域内の農業環境が悪化し、農地の遊休化が問題となりました。この状況を改善する方策の一つとして、自治体の仲介なども含めた市民農園の制度化が進められました。

市民農園二法と制度化

市民農園の制度化を大きく前進させたのが、1989年の特定農地貸付法と1990年の市民農園整備促進法です。「市民農園二法」と呼ばれるこの2つの法律により、市民農園の整備と運営が法的に支えられるようになりました。2016年時点では、全国に4223件の市民農園が存在し、約19万区画の農地が提供されていました。

多様な市民農園の形態

市民農園には、大きく分けて「特定農地貸付方式」と「農園利用方式」の2種類があります。「特定農地貸付方式」は、特定農地貸付法に基づき、農地を一定期間貸し付ける方式です。一方、「農園利用方式」は、農地所有者が自ら農業経営を行い、その一部を市民に体験させる方式です。この方式では、農地所有者の指導・管理のもと、利用者は複数の段階で農作業を体験できます。

近年増加しているのが「滞在型市民農園」です。市民農園整備促進法では、休憩施設等の整備が義務付けられており、この規定を踏まえ、宿泊施設を備えた市民農園が各地に開発されています。遠方からの利用者にとって利便性が高く、特に「クラインガルテン」を名称に含む施設が多く見られます。これに対し、従来からの近郊型の市民農園は「日帰り型市民農園」などと呼ばれます。

市民農園の意義

市民農園は、都市住民に農作業体験の機会を提供するだけでなく、遊休農地の有効活用、都市と農村の交流促進、地域活性化など、多様な役割を担っています。農地所有者にとっても、遊休農地を活用できる有効な手段となります。今後も、都市化が進む中で、市民農園の果たす役割はますます重要になっていくでしょう。

参考資料

「市民農園のすすめ」見る緑から作る緑へ 祖田修 (1992) 岩波書店
「市民農園のすすめ」千葉県市民農園協会 (2004) 創森社
「農家と市民でつくる新しい市民農園」法的手続き不要の「入園利用方式」廻谷義治 (2008) 農山漁村文化協会
「もっと上手に市民農園」4.5坪・45品目 小さな畑をフル活用 (コツのコツシリーズ)斎藤 進 (2012) 農山漁村文化協会

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