賀島政範

賀島政範：徳島藩家老から実業家へ

賀島政範は、1839年（天保10年）に徳島藩家老を務めていた賀島政延の三男として誕生しました。幼少期から藩政の中枢を担う家系に生まれ、伝統と重責を背負って成長したと考えられます。家系としては、父である政延、そして養父である政綽といった人物が、その歴史の重みを物語っています。

政範の人生は、明治維新という激動の時代と深く結びついています。1870年（明治3年）、兄である政綽の隠居に伴い、家督と1000石の禄を相続しました。これは、家系の存続と社会的地位を維持する上で、極めて重要な出来事であったと言えるでしょう。しかし、翌1871年（明治4年）、廃藩置県により徳島県庁舎が政範の屋敷に置かれるという事態が発生し、彼は旧領へと移住を余儀なくされます。この出来事は、明治政府による新たな政治体制への移行と、それに伴う社会構造の変化を象徴する出来事であったと言えるでしょう。

新たな時代への適応を迫られた政範は、単なる藩主家臣としての役割に留まることはありませんでした。彼は、実業界への進出という新たな道を歩み始めます。1882年（明治15年）、藍商人として知られる大串竜太郎と共に徳島銀行を設立しました。これは、明治期の経済発展に大きく貢献しただけでなく、政範自身の経済的な基盤を強化する上で重要な役割を果たしたと考えられます。徳島銀行の設立は、単なる金融機関の設立というだけでなく、地域の経済発展に貢献する重要な事業として位置づけられるべきでしょう。

1885年（明治18年）、政範は嫡男である政一に家督を譲り、隠居生活に入ります。しかし、彼の社会への貢献はこれで終わりではありませんでした。1900年（明治33年）、明治維新における功績が認められ、息子の政一が男爵に叙せられました。これは、政範自身の功績が間接的に評価されたと考えることもでき、その生涯がいかに社会に貢献したかを物語っています。

1913年（大正2年）、75歳でこの世を去りました。彼の生涯は、激動の時代を生き抜き、藩主家臣としての役割から実業家としての役割へと転身し、そして息子の栄達を見るという、波乱に満ちたものでした。その功績は、徳島藩の歴史、そして明治期の日本の経済史において重要な位置を占めていると言えるでしょう。賀島政範という人物は、単なる家老の枠を超え、時代の変化に対応し、地域社会の発展に貢献した人物として、歴史に名を刻んだと言えるでしょう。彼の生き様は、現代社会においても学ぶべき点が多いのではないでしょうか。参考文献として、藤井喬著『阿波人物誌』が挙げられています。

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