賞恤金

賞恤金（しょうじゅつきん）

賞恤金とは、国や地方公共団体に勤務する公務員が、一般的な職務と比較して極めて危険性の高い任務に従事し、その職務遂行中に生命の危険に直面したり、特有の事故に巻き込まれたりした結果、殉職または重度の障害を負った場合に、本人または遺族に対して支給される金銭のことを指します。これは、彼らの勇敢で献身的な行為と顕著な功労を称え、弔いの意を示したり、傷病に対する見舞いを行うことを目的としています。同時に、日頃から国の安全や公共の利益のために危険を顧みず職務に専念する職員が、万が一の事態に際しても経済的な不安なく職務に邁進できるよう支援するという側面も持ち合わせています。

制度の概要

この制度は、特に高い危険が予測され、災害を受ける可能性が高い職務に就く職員を対象としています。彼らが自身の安全を顧みることなく職務を全うし、その過程で命を落としたり、回復の見込みがない重い障害を負ったりした場合に適用されます。単なる業務上の災害補償とは異なり、その根底には、危険を冒して公共のために尽くした特別な功労に対する国家や社会からの評価と敬意があります。

日本における制度

日本における賞恤金制度は、支給対象となる職員の種類や所属機関によって規定が異なります。

地方自治体職員：各地方自治体の条例によって、具体的な支給条件や金額が定められています。
自衛官：防衛大臣の訓令に基づいて支給されます。自衛官に対する賞恤金の額は、その任務の性質や危険度によって変動することがあります。過去には、イラクへの特別措置法に基づく派遣では最高額が9000万円に設定されていましたが、2015年時点では最高6000万円が基準とされていました。しかし、その後の南スーダンへの派遣など、特に危険度の高い任務においては、再び最高額が9000万円に引き上げられる措置が取られています。最低額は490万円と定められています。

税制上の扱い
賞恤金は、その性質から、受け取った本人または遺族に対し、相続税や所得税の課税対象とはされません。

支給実績
過去の記録を見ると、殉職した自衛官の遺族に対しては賞恤金が支払われた事例が確認されています。しかし、生命に別状はなくとも、職務遂行中に重い怪我を負い、障害が残った自衛官に対する賞恤金の支給は、その件数において非常に少ない状況にあるとされています。

殉職者特別賞恤金

警察官については、特に生命の危険が予想される地域への出動任務中に死亡したと認定された場合、「殉職者特別賞恤金」が国から支給される制度が存在します。この制度が制定されるきっかけとなったのは、1971年に発生した東峰十字路事件です。この事件では、新東京国際空港（現：成田国際空港）予定地の代執行警備にあたっていた警察官が過激派の襲撃を受け、3名が殉職するという悲劇が起こりました。当初、この特別賞恤金は、外部からの「危害を受けた結果」として殉職した警察官を主な対象としていましたが、2011年の東日本大震災における警察官の殉職を契機に、大規模な災害における殉職者もその対象に含まれるように制度が見直され、拡大されました。

賞恤金は、一般的な労働災害における補償金や、戦時下における戦死者への弔慰金とは性格を異にする、特別な功労に対する報償という側面が強い金銭と言えます。

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