質調整生存年

質調整生存年（QALY）とは

質調整生存年（Quality-Adjusted Life Year）略してQALYは、医療の効果を評価するために使用される重要な指標です。この指標は、生存の質と量の両方を考慮に入れています。1QALYは、完全に健康な状態で過ごす1年間に相当します。QALYスコアは通常、完全な健康を1、死亡を0とし、その中間の値で健康状態を表現します。たとえば、ある人が健康でない状態で1年間を過ごす場合、そのQALYは1未満となり、死亡した場合は0QALYと計算されます。さらに、特定の健康状態が「死亡よりも悪い」と見なされる場合、負のQALYも算出されることがあります。

QALYの計算方法

QALYを算出するためには、2つの基本的な数値が必要です。まず1つ目は、特定の期間中の健康状態に関連する効用値です。この効用値は、0（死亡）から1（完全健康）の間で評価されます。健康状態によっては、その効用値がマイナスになることもあり、これはその状態が非常に厳しいことを示しています。

次に、2つ目の値はその人の観察期間、いわゆる生存年数です。この期間の測定データは、通常、臨床試験や観察研究から得られます。QALYはこれら2つの数値の積によって求められます。たとえば、健康状態が良好であった場合は1年間で1QALYを得たことになりますが、効用値が0.5の状態で過ごす場合は0.5QALYとなります。これは、完全な健康状態で半年間過ごすことに相当します。このようにQALYは、異なる健康状態間のトレードオフを評価するのに適した指標です。

効用値の重み付け

QALYを算出する際の効用値は、一般にアンケート調査を通じて評価されます。EuroQol GroupのEQ-5D質問票は、健康状態を測るための標準的なツールとして広く使用されています。この質問票は、移動能力、日常生活の管理、通常の活動、痛みや不快感、不安といった5つの側面から健康状態を評価します。日本においても、EQ-5D-5Lというツールが翻訳されて利用可能です。

さらに、健康状態の評価にはいくつかの方法があります。時間得失法（TTO）は、疾患を持つ状態の1年を健康な期間に置き換える手法です。基準的賭博法（SG）は、疾患を持つ状態での選択肢を健康か死亡の2つに絞りその比率から評価します。また、視覚的アナログ尺度法（VAS）は、0から100%で健康状態を評価する方法で、こちらは最もシンプルですが、主観的な評価に依存しています。

QALYの適用

QALYは特に医療における費用対効果分析において重要な役割を担っています。医療行為にかかるコストと得られたQALYを比較することで、その効果を明らかにします。1QALYを得るために必要なコストは、incremental cost-effectiveness ratio（ICER）として知られ、しばしば医療行為の妥当性を判断する基準として利用されます。

イギリスでは、国立医療技術評価機構（NICE）が、国民医療サービス（NHS）に1QALY当たりのコストの上限を設定しています。2013年以降、この上限は£20,000から£30,000の範囲で提示されています。

まとめ

質調整生存年（QALY）は、医療の効果を測るための強力なツールであり、医療政策や資源分配の判断において非常に重要な役割を果たしています。QALYを適切に利用することで、医療の質と効率を向上させることが期待されます。

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