赤いペガサス

赤いペガサス：F1黎明期の熱狂と悲劇を描いた漫画

『赤いペガサス』は、村上もとか氏によって1977年から1979年にかけて『週刊少年サンデー』で連載された漫画作品です。日本においてまだマイナーな存在だったF1グランプリの世界を、リアルに、そして鮮やかに描いた先駆的な作品として知られています。F1ブームの到来には至らなかったものの、当時のF1の魅力を多くの読者に伝えることに成功しました。

ストーリー：日系英国人レーサーの挑戦

主人公は日系英国人のF1ドライバー、ケン・アカバです。彼は、緊急時に同じ血液型を持つ妹ユキの輸血が必要となる、希少な血液型「ボンベイ・ブラッド」の持ち主です。兄妹の絆を深く描いた物語は、レースシーンだけでなく、人間ドラマとしても大きな魅力を持っています。

ケンは、当時活躍していた数々の実在のF1ドライバー（マリオ・アンドレッティ、ニキ・ラウダ、ジェームス・ハントなど）や、マシン（タイレル6輪、ロータスなど）と関わりながら、過酷なレースを戦い抜きます。彼のドライビングテクニックや、マシン開発、チームスタッフとの交流など、F1の世界観が細部まで丁寧に描写されています。

実話に基づいた衝撃的な事故

物語には、当時のF1で実際に起きた痛ましい事故が、ケンの経験として描かれています。

南アフリカグランプリ: ケンがコースを横断したマーシャルをはねてしまう事故は、シャドウのトム・プライスが巻き込まれた、同じような悲劇的な事故を元にしています。
アメリカ西グランプリ: ケンが助けられずに亡くなってしまう仲間のドライバーのエピソードは、1973年オランダグランプリで発生したロジャー・ウィリアムソンとデビッド・パーレイの事故がモデルとなっています。
* モナコグランプリ: ケンとジョディー・シェクターが絡んだマシン海中転落事故も、1976年までに2度実際に起こった事故を反映しています。

これらの事故は、物語にリアリティと深みを与え、F1の世界の危険性と、ドライバーたちの勇気と葛藤を浮き彫りにしています。

魅力的な登場人物たち

物語を彩る個性豊かな登場人物たちも、『赤いペガサス』の魅力の一つです。主人公ケンだけでなく、彼の妹ユキ、ライバルドライバー、チームメイト、チームオーナーなど、それぞれがドラマティックな人生を歩んでいきます。特に、ケンとユキの兄妹関係、ケンとライバルドライバーとの緊張感あふれる関係性、チームメイトとの友情と葛藤などは、物語に奥行きを与えています。

続編『赤いペガサスII 翔』

1987年からのF1ブームを背景に、1988年から1989年に『週刊少年サンデー』で連載された『赤いペガサスII 翔』では、ペペとユキの息子、ショウ・アカバが主人公として登場します。1988年シーズンの後半が舞台となり、新たなドラマが展開します。

現実とフィクションの融合

『赤いペガサス』シリーズは、実在のドライバーやマシン、そして事故を題材としながらも、フィクションの世界で独自の物語を展開しています。この現実とフィクションの融合が、作品にリアルな臨場感と、深い感動を与えていると言えるでしょう。当時を知る世代には懐かしさを感じさせ、若い世代にはF1という世界への興味を呼び起こす、魅力的な作品です。当時発売されたポピニカのSV01改や、近年発売された1/43モデルなど、模型としても高い人気を誇っています。

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