赤い河

『赤い河』（原題：Red River）は、1948年に公開されたアメリカ合衆国の西部劇映画です。巨匠ハワード・ホークス監督が手がけた本作は、アカデミー賞にもノミネートされ、西部劇映画史に残る名作として高い評価を得ています。

物語は1851年、開拓時代のアメリカを舞台に幕を開けます。開拓者のトーマス・ダンソンは、広大な土地を求めて幌馬車隊を離れ、独立して牧場を築くことを決意します。愛する女性フェンとの別れ、そしてインディアン襲撃の悲劇を経験しながら、彼は孤独な道を歩み始めます。

道中で出会った少年マシューを養子に迎え、ダンソンはミシシッピー川のほとりに広大な牧場を築き上げます。14年の歳月が流れ、1万頭を数えるまでに成長した牧場は、南北戦争の影響で経営危機に陥ります。

そんな中、成長したマシューが帰還。ダンソンは、莫大な数の牛をテキサスからセダリアまで移動させる、壮大なロングドライブを決行することを計画します。列車輸送という安全な手段もあったにも関わらず、ダンソンはあえて伝統的な方法を選びます。それは、単なる経済的な問題を超えた、彼の生き様、そしてアメリカ開拓時代の精神を象徴する行為だったと言えるでしょう。

ダンソンは、かつて共に旅をしたグルートと共に、多くの牧童を率いて旅立ちます。この危険な旅路は、過酷な自然環境、そして人間の業と葛藤が複雑に絡み合った、壮絶なドラマです。

本作は、ボーデン・チェイスが執筆した「Blazing Guns on the Chisholm Trail」を原作としています。チェイス自身とチャールズ・シュニーが脚本を共同で執筆し、当時新人で後にスターとなるモンゴメリー・クリフトも出演しています。

『赤い河』は、単なる西部劇にとどまりません。アメリカ開拓時代の歴史、人間ドラマ、そして壮大な自然描写が三位一体となり、観る者の心を揺さぶる傑作です。アカデミー賞ノミネートという輝かしい実績も、その高い完成度を証明しています。日本の公開に際しては、ユナイテッド・アーティスツ日本支社と松竹洋画部が初めて提携して配給されました。

キャスト、スタッフ陣も豪華な顔ぶれです。監督はハワード・ホークス、製作総指揮はチャールズ・K・フェルドマン、撮影はラッセル・ハーラン、音楽はディミトリ・ティオムキンなど、映画史に名を残す数々の才能が集結しています。アカデミー賞では、ボーデン・チェイスが原案賞、クリスチャン・ナイビーが編集賞にノミネートされました。

『赤い河』は、時代を超えて多くの人々を魅了し続ける西部劇の金字塔として、映画史にその名を刻んでいます。

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