赤ちゃんはいいな

『赤ちゃんはいいな』(Baby Puss、1943年12月25日公開)は、ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ監督による『トムとジェリー』シリーズの一作品です。この作品は、ブッチ、フランキー、トプシーという3匹の野良猫が初めて登場する記念すべき作品でもあります。

物語は、飼い主の娘がトムを赤ちゃん扱いすることから始まります。オムツを付けられ、無理やりベビーベッドに寝かされるトム。しかし、娘から与えられた哺乳瓶の中にはトムの大好物のミルクが入っており、トムはご機嫌でミルクを飲み干します。

その様子を目撃したジェリーは、子守唄のレコードをかけ、赤ちゃんの真似をしてトムをからかいます。怒ったトムはジェリーを追いかけ、ジェリーはドールハウスに逃げ込みます。ドールハウスの中でジェリーは入浴の真似をしたり、人形の服を着てメスネズミに変装してみたりと、必死にトムから逃げようとしますが、結局はトムに見つかってしまいます。

トムがジェリーをドールハウスから引き出そうとしたその時、娘が部屋に戻ってきます。娘はトムに「赤ちゃんはずっと寝ていないとダメよ。今度起きたらひまし油を飲ませるからね」と警告し、再び部屋を出ていきます。

その後、ジェリーは外にいたブッチら3匹の野良猫に、トムが赤ちゃん扱いされている様子を見せます。ブッチらはジェリーと共にトムをからかい、赤ちゃんごっこはさらにエスカレートしていきます。ミルクを横取りされたり、金魚鉢に投げ込まれたり、オムツをびしょ濡れにされたりと、トムは散々な目に遭います。最後は「Mamãe eu quero（ママが欲しい）」と歌い踊り出す始末。

しかし、娘が帰宅し、その光景を目撃してしまいます。ブッチらはトムを残して逃げ出し、娘はトムを叱責。「おとなしくしていない悪い子」と非難されたトムは、娘の警告通りひまし油のお仕置きを受けることになります。ジェリーはトムの尻尾をくるみ割り機で挟んで口を無理やり開け、ひまし油を飲ませようとします。ひまし油の苦さにトムは吐き出し、その様子を見てジェリーは大笑い。しかし、ひまし油のボトルが倒れてジェリーにもひまし油がかかり、最後はトムとジェリーが仲良く同じポーズで吐き出すというオチを迎えます。

この作品には、様々なキャラクターが登場します。赤ちゃんごっこに付き合わされたトム、トムをからかうジェリー、トムを赤ちゃん扱いする飼い主の娘、そしてトムを虐めるブッチ、フランキー、トプシーといった野良猫たち。さらに、金魚やドールハウスの人形なども登場し、物語に彩りを添えています。

『赤ちゃんはいいな』は、予測不能な展開とコミカルな描写が魅力の作品です。トムの哀れな姿と、ジェリーやブッチらの悪巧み、そして娘の厳しいお仕置きなど、様々な要素が絶妙に組み合わさり、観客を飽きさせません。1940年代の作品ながら、そのユーモラスな演出は現代においても十分に通用する、まさに不朽の名作と言えるでしょう。

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