赤光

『赤光』の紹介

『赤光』（しゃっこう）は、斎藤茂吉が大正2年（1913年）10月に東雲堂書店から発表した処女歌集です。この歌集は、茂吉のロマンチックな表現と新鮮な歌風により、歌壇や文壇に非常に大きな影響を及ぼし、一躍著者としての名声を高めました。『赤光』は茂吉の最も代表的な作品と見なされており、1905年から1913年までの彼の貴重な創作が集められています。

歌集名の由来

歌集のタイトル「赤光」は、『仏説阿弥陀経』の一節から取られています。この一節では、「地中蓮華大如車輪青色青光黄色黄光赤色赤光白色白光微妙香潔」という言葉が使われています。茂吉は自らの跋文の中で、子供の頃に遊び仲間が唱えていたお経を思い出しています。彼は「しゃくしき、しゃっこう、びゃくしき、びゃっこう」という言葉を耳にし、その中の「しゃっこう」が「赤い光」を意味することを東京で赤い表紙の本を手に入れた際に知ったと記しています。

内容と構成

初版には834首が収められ、逆年代順に整列されていますが、1921年に発行された改選版では、首数が760首に削減され、年代順に再編成されました。茂吉がこの作品を発表した当時、彼は31歳で、東京大学の教室や巣鴨病院にて医師として勤務していました。特に、この歌集が発表された背景には、彼の身近な人々の死が影響しており、母や師の伊藤左千夫を相次いで失った直後にこの作品が誕生しました。

特に「悲報来」「おひろ」「死にたまふ母」といった重要な連作は、この歌集に収められています。これらの作品は、個人的な喪失感や悲しみを豊かな詩的表現によって描いており、読む人々に深い感動を与えています。

現在の状況

『赤光』は、現在新潮文庫や岩波文庫などの出版社から、単独の著作として再発行されています。斎藤茂吉の作品が時代を超えて読み継がれている理由は、その普遍的なテーマと鋭い情緒表現にあります。

この歌集は、詩を通じて人間の感情や経験を巧みに描写することに成功しており、今なお多くの読者に愛されています。日々の生活の中で感じる喜びや悲しみ、愛情がこの作品には込められており、時代を超えて共感を呼ぶ力があります。

『赤光』は、斎藤茂吉の文学的なスタート地点であり、彼の詩的な才能が開花した瞬間を示す重要な作品です。その影響力は、多くの後進の詩人たちにも引き継がれ、今もなお日本文学界において重要な位置を占めています。

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