赤坂城の戦い

赤坂城の戦い

赤坂城の戦いは、鎌倉時代末期の元弘元年（1331年）9月11日に河内国・赤坂城（下赤坂城）で起こりました。楠木正成が笠置山を落ち延びた護良親王を迎え、少数兵力で鎌倉幕府の正規軍全4軍と対峙した籠城戦です。この戦いは、鎌倉幕府に対する楠木正成の最初の本格的な抵抗として知られています。

戦いの背景

鎌倉時代末期、後醍醐天皇は幕府の支配からの脱却を目指し、倒幕計画を企てます。1324年の正中の変で一度失敗した後、1331年（元弘元年）に再び倒幕を計画しますが、これも事前に発覚します（元弘の変）。後醍醐天皇は笠置山で挙兵し、楠木正成はこれに応じ、赤坂城で兵を挙げました。

幕府軍は笠置山を包囲し、約1ヶ月後に陥落させます。後醍醐天皇らは捕らえられましたが、護良親王は赤坂城へと逃れました。

戦闘の経過

幕府軍は下赤坂城に立てこもる楠木正成と護良親王に対し、攻撃を開始しました。戦闘開始時期は不明確ですが、9月14日には既に下赤坂城への攻城戦が始まっていた記録があります。

『太平記』では、笠置山攻城戦の早期決着に不満を抱いた幕府軍が、赤坂城を軽視して攻撃を仕掛け、楠木正成の奇策に翻弄されたとされています。しかし実際には、幕府は正成を当初から脅威と認識しており、本格的な決戦の前から正成を討伐するために正規軍4軍を派遣しています。

10月15日、鎌倉から派遣された幕府の正規軍4軍が京から下赤坂城に向けて出陣しました。大仏貞直は宇治から大和国へ、金沢貞冬は石清水八幡宮から河内国讃良郡へ、江間越前入道は山崎から淀川沿いに四天王寺へ、足利高氏（後の尊氏）は伊賀路を西へと進軍しました。翌10月16日には下赤坂城に到着し、正成に対して大規模な攻撃を開始しました。

正成が正規軍の攻撃にどれだけ持ちこたえたのか、また『太平記』に描かれるような奇策があったのかは定かではありません。しかし、幕府側の周到な準備にもかかわらず、正成の討伐と護良親王の捕獲は失敗に終わりました。

正成の抵抗は幕府にとって大きな痛手となり、2年後の正慶2年（1333年）には、京で「楠木」を嘲笑する落書きが見られるほどでした。

『太平記』における記述

『太平記』によれば、笠置山を陥落させた幕府軍は、関東からの軍勢を加え、大軍で赤坂城へ攻め寄せました。その兵力は30万騎を超えたとされています。

9月11日、幕府軍は赤坂城を包囲し、その脆弱さからすぐに陥落すると考え、一斉に攻撃を仕掛けました。しかし、楠木正成は200余りの兵で籠城し、弟の楠木正季と和田正遠に300余りの兵を預け、近くの山に伏兵として配置していました。正成は城壁に近づいた幕府軍に対し、弓矢による攻撃を集中させ、多数の死傷者を出しました。

その後、幕府軍が休憩に入った隙を突き、楠木正季と和田正遠が伏兵を率いて奇襲をかけ、城からも正成の軍勢が突撃しました。幕府軍は混乱し、石川の河原まで退却しました。

幕府軍は攻撃を再開し、塀を破壊しようとしましたが、正成は二重構造の塀を切り落とし、落下した敵兵に大木や大石を浴びせました。また、熱湯を浴びせるなどの奇策も用い、幕府軍に大きな損害を与えました。

その後、幕府軍は包囲戦に切り替えましたが、赤坂城は兵糧が不足しており、長期戦は不可能でした。正成は諸将と協議し、同年10月21日夜に赤坂城に火を放ち、撤退しました。幕府軍は城内で見分けのつかない焼死体を発見し、正成とその一族が自害したと思い込みました。しかし、正成は密かに脱出し、その後も幕府に対する抵抗を続けました。

護良親王も赤坂城から脱出し、吉野で挙兵しました。

戦闘の規模

幕府側の兵力は『太平記』などの文学作品では誇張された記述が見られますが、幕府が正規軍4軍を投入したことは事実です。正確な兵力は不明ですが、かなりの大軍であったと考えられます。

まとめ

赤坂城の戦いは、楠木正成が初めて歴史の表舞台に登場した戦いであり、その後の倒幕運動の先駆けとなりました。寡兵で大軍を相手に善戦した正成の戦術は、後世に大きな影響を与えました。

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