赤城自然園

赤城自然園は、群馬県渋川市赤城町に位置する広大な自然観察園です。現在は株式会社クレディセゾンによって運営されており、現代の子どもたちをはじめとする人々が、ありのままの自然に直接触れ合い、生命の営みや季節の移ろいから感動を得られる場を提供することを使命としています。

設立の理念と経緯

この自然園の誕生は、かつてセゾングループを率いた堤清二氏の強い問題意識に端を発します。氏がデパートの屋上で初めてカブトムシやオタマジャクシを見て驚く都市部の子どもたちの姿に衝撃を受けたことから、リゾート開発のために取得していた約120ヘクタールの広大な土地を、真の自然を体験できる場所に転換するという構想が生まれました。当初、この土地はスギやカラマツがパッチワーク状に植えられた荒れた樹林地でしたが、水源を涵養し土砂の流出を防ぐ保安林としての機能を維持しながら、計画的な間伐や下草刈り、植え付けといった手を加えることで、多様な樹木が生い茂る豊かな森へと再生させるプロジェクトが開始されました。森に生息する生物の観察、特に昆虫との触れ合いを重視する「オープンインセクトガーデン」の考え方が整備の基本に置かれています。

園内の特徴と整備

敷地は約120ヘクタールにおよび、マツやスギなどを主体とした在来種の雑木林を中心に構成されています。園内は「四季の森」と、世界有数の規模を誇るシャクナゲのコレクションを展示する「セゾンガーデン」という主要なエリアに分かれています。また、将来的な計画として、昆虫採集などを体験できる「体験の森」の整備も構想されています。標高600メートルから700メートルに位置し、設計には当時の西武都市開発の技術スタッフや環境計画、植生調査、造園の専門家など多分野のプロフェッショナルが携わりました。森の整備は1984年から、造成と植栽は1987年から始まり、1992年以降も補植や養生が現在に至るまで継続されています。運営側は、「人間が植えた植物がその土地に根付き、そこに本来の生物たちが営みを始めるまでは、それはまだ自然ではない」という哲学を持っており、人の手が入った部分が周囲の自然環境に自然に溶け込んでいくよう、丁寧な管理が行われています。

現在の姿と取り組み

長年のきめ細やかな整備の結果、人の手で植えられた山野草はしっかりと根付き、その子孫を増やしています。それに伴い、多くの種類の小鳥や昆虫が飛来するようになり、豊かな生態系が育まれています。園では、敷地内の植物のリスト化や、昆虫類の生態データ、標本の作成といった基礎的な情報の収集も継続して行われています。これらの活動は、将来的に観察フィールドの状況と生物データを結びつけた高度な利用システムを構築するための布石ともなっています。自然との触れ合いを最優先するため、園内の開発は最小限に抑えられています。森林の健全な育成に必要な下枝刈りや間引きなどを除き、大規模な人工物は設けられていません。来園者が利用できる飲食施設やレストランなども配置されておらず、飲み物の自動販売機のみが設置されています。

運営の変遷と再生

赤城自然園の運営は、過去に厳しい時期を経験しました。1993年に一部が開園したものの、年間数億円に及ぶ運営費に対し、開園日が年間50日程度と極めて限られていたため、入園者は年間6000人程度にとどまり、多額の赤字を計上していました。2008年、運営主体であった西友がウォルマートの完全子会社となった際、赤字経営であったこの自然園は経営見直しの対象とされ、2009年3月に一度閉鎖されることとなりました。このとき従業員も一旦は全員解雇されましたが、一部の元社員が無給で管理を継続し、新たな運営者を探す活動が行われました。その結果、かつて同じセゾングループに属していた株式会社クレディセゾンが運営を引き継ぐことになり、2010年4月に自然園は再オープンを果たしました。クレディセゾンによる運営以降、開園日が旧西友時代の年間約50日から年間約150日へと大幅に増加し、それに伴い入園者数も年間約5万人にまで増加しました。現在の運営体制は、入園料収入だけでなく、園の理念に賛同する企業からの協賛金を大きな収入の柱としています。旧セゾングループの企業であるパルコや良品計画をはじめ、日本IBM、NTTデータ、朝日生命、JCB、凸版印刷など、多くの企業がオフィシャルスポンサーとして支援しています。

その他の活動

赤城自然園は、その優れた自然環境が評価され、2014年には森林セラピー基地としての認定を受けています。心身の癒しを求める人々にとって、自然を満喫できる場として広く認知されています。

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