赤外線カメラ

赤外線カメラ：熱を可視化する技術

赤外線カメラは、物体から放射される赤外線エネルギーを検知し、画像として表示する装置です。すべての物質は絶対零度（-273.15℃）以上であれば赤外線を放射しており、その量は絶対温度の4乗に比例します。この性質を利用することで、赤外線カメラは対象物の温度分布を可視化することが可能になります。さらに、赤外線は可視光線とは異なり、暗闇でも検知できるため、夜間や低照度環境下での撮影にも適しています。赤外線カメラで撮影された画像はサーモグラフィと呼ばれ、温度に応じた色の変化で表現されます。

赤外線カメラの構造

赤外線カメラは、大きく分けて「冷却型」と「非冷却型」の2種類があります。

冷却型（量子型）: 高感度な赤外線検出を実現するために、アンチモン化インジウム、テルル化カドミウム水銀、セレン化鉛などの化合物半導体を使用しています。これらの半導体は、ショットノイズと呼ばれるノイズの影響を低減するために、極低温に冷却されます。冷却型は、高解像度で精度の高いサーモグラフィを得ることが可能です。

非冷却型: 微細加工技術によって作られたボロメータ、熱電対、焦電素子などの検出器を使用します。冷却が不要なため、小型化、低価格化が実現し、近年利用が拡大しています。冷却型に比べると画質は劣りますが、多くの用途で十分な性能を発揮します。

赤外線カメラの用途

赤外線カメラは、その高い感度と多様な機能から、医療、非破壊検査、安全保障など、幅広い分野で活用されています。

1. 医療分野:

赤外線カメラは、体表温度の分布を測定し、画像化する用途で広く利用されています。乳がんの検診や、手足の血流低下などの診断に役立ちます。また、国際空港や公共施設などで、新型インフルエンザなどの感染症の簡易検査にも用いられています。患者の体温分布を迅速に把握することで、感染症の早期発見に貢献します。

2. 非破壊検査:

建築物の調査において、赤外線カメラは強力なツールとなっています。例えば、外壁タイルの浮きを発見するために使用されます。タイルとモルタルの接着強度が低下すると空気層が生じ、太陽光や外気温の影響で温度差が生じます。この温度差を赤外線カメラで検出することで、タイルの浮きを非破壊で検査できます。同様に、雨漏りの経路の調査、断熱不良部分の特定、木造建築物の筋かいの有無の確認などにも応用されています。さらに、電気設備の劣化診断においても、接触不良による発熱を検出するのに役立ちます。

3. 安全保障分野:

赤外線カメラは、暗視カメラとして警備や軍事に広く利用されています。受動的な撮像方式であるため、相手方に気づかれにくいという利点があります。航空機にはIRST（赤外線捜索追尾）やFLIR（前方赤外線）として搭載され、敵機の探知や追尾に用いられています。また、軍用車両や個人用の暗視装置にも応用されています。

まとめ

赤外線カメラは、熱を可視化する技術として、医療、非破壊検査、安全保障など様々な分野で重要な役割を果たしています。その用途はますます広がりを見せており、今後も技術革新が期待される分野です。

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