赤外線写真

赤外線写真の概要

赤外線写真（せきがいせんしゃしん）は、近赤外線を利用した特異な写真表現手法です。通常、光の波長は約700nmから900nmの範囲にあり、可視光線も若干含まれています。この技術は、植物や風景を撮影する際に特に独自の表現をもたらします。特定の「赤外フィルター」を使用することで、撮影する際に可視光を大部分遮断し、主に近赤外線に感応する表現を実現します。

赤外線写真の特性

赤外線写真では、自然界の色合いが異なって見えるため、主に「疑似色彩写真」が生成されることがあります。また、「ウッド効果」と呼ばれる現象では、植物の葉が白く輝く様子が特徴的です。これらの効果は、クロロフィルが近赤外線を強く反射することによるもので、まるで雪が積もっているかのように見えることがあります。さらに、赤外線は散乱が起こりにくいため、空はより暗く、霧や雲の細部が明瞭に撮影されることもあります。

赤外線撮影時、人物の肌は白く写り、目は黒く映るため、被写体の印象を大きく変えることができます。

赤外線写真の歴史

赤外線写真は1910年、ロバート・ウィリアム・ウッドによって初めて発表され、その際にウッド効果についても触れられました。それ以前は、一般的な写真フィルムの感光剤であったハロゲン化銀の弱い赤外線への反応性のため、撮影は困難でしたが、増感色素を使用することで改良が進みました。第一次世界大戦時には、空中写真撮影のために赤外線高感度フィルムが開発され、1960年代にはコダックのエクタクロームの登場が広く利用されるきっかけとなります。

その後、著名なアーチストたちが赤外線写真を用いたことにより、音楽やアートの世界でも注目を浴びるようになりました。この独特な色彩と雰囲気は、サイケデリックな美意識と調和し、多様なアーティストの表現方法の一部となりました。

撮影方法

赤外線写真を撮影するには、マニュアルフォーカスのカメラが一般的に推奨されます。カメラには赤外線撮影用のインデックスマークが付けられていますが、この位置にピント合わせをすることが重要です。撮影には三脚が必要で、曇りや風、昼夜の条件を考慮して、明るい環境での撮影を避けなければなりません。デジタルカメラでは、プレビュー機能が利用できるためピント合わせは容易ですが、カメラ内の赤外線カットフィルターの影響を受ける場合があります。

フィルムとデジタル撮影

赤外線写真はフィルムカメラで簡単に撮影できますが、特殊なフィルムやフィルターが必要です。白黒赤外線写真では、青い波長を抑えるフィルターを使用することが一般的です。カラー赤外線フィルムでは、近赤外線が赤、赤が緑、緑が青として表現されるため、特定のフィルターを使用して青色波長を排除することが必要です。

近年では、デジタルカメラでも赤外線撮影が可能になりましたが、赤外線への敏感さや色情報の補正に留意する必要があります。特に、フィルターを取り外すことや、デジタルカメラのセンサー自体に赤外線感度を持たせる特別な改造が必要です。デジタルでの赤外線写真は、複雑な調整や工夫が求められる一方で、従来のフィルム写真とは異なる新しい表現の場を提供しています。

結論

赤外線写真は、光の視覚の奥深さを再発見させる技術で、その歴史や技術の進化が多様な表現を生み出しています。アート、科学、風景描写において、赤外線写真は独自の楽しさや驚きを提供し、今後も新しい視点を提供し続けることでしょう。

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