越前平井駅

越前平井駅：鯖浦線の歴史を刻んだ駅跡を訪ねて

福井県鯖江市に存在した越前平井駅は、かつて福井鉄道鯖浦線に属していた駅です。昭和48年（1973年）の鯖浦線全線廃止に伴い廃駅となり、現在は面影を残すのみとなっていますが、その歴史は昭和初期に遡ります。

開業から廃線まで

越前平井駅は、大正15年（1926年）10月1日、鯖浦電気鉄道の駅として開業しました。その後、昭和20年（1945年）8月1日には、会社の合併により福井鉄道鯖浦線の駅となりました。およそ半世紀に渡り地域住民の足として活躍した同駅でしたが、昭和48年（1973年）9月29日、鯖浦線全線廃止により廃駅となりました。

駅舎と構造

越前平井駅は、地上駅で相対式ホーム2面2線の構造を有していました。木造の駅舎が特徴的で、利用客の往来を見守っていました。しかし、駅は晩年、駅舎側のホームのみが使用されるようになりました。構内には引込み線も存在していたようです。その簡素ながらも温かみのある佇まいは、多くの人の記憶に残っていることでしょう。

現在の駅跡

現在、かつて駅舎があった場所には平井児童センターが建てられています。子供たちの笑顔が、往時の賑わいを偲ばせるかのようです。また、引込み線があった場所はミニ公園として整備され、地域住民の憩いの場となっています。そして、駅舎の反対側にあったホームの一部は、サイクリングロードの休憩広場として活用されています。ホームには駅名標を模した案内板が設置されていますが、注目すべきは振り仮名です。駅名標には「へいい」ではなく、地区名である「ひらい」と表記されている点です。これは、地元住民にとって親しみやすい表記を採用した結果と言えるでしょう。

複雑な路線変遷

越前平井駅周辺の路線は、歴史的経緯を辿ると非常に複雑です。昭和34年（1959年）7月19日までは、連絡線が無く、東鯖江と水落信号所間に水落駅（初代）が存在していました。また、福武線水落駅（2代目）の移転と連絡線の開通、そして昭和37年（1962年）1月25日の鯖浦線水落信号所以遠廃止など、数々の変化を経験しました。鯖浦線水落駅は、この期間、南水落駅と称していました。これらの変遷は、越前平井駅の位置づけを理解する上で重要な要素となっています。

駅周辺の変貌と記憶

越前平井駅は、廃止から時間が経過し、その姿は大きく変わりました。しかし、駅跡地に残る施設や案内板は、かつてこの地に存在した駅舎の面影と、その歴史を今に伝えています。子供たちの遊ぶ声が響き渡る児童センター、静かに憩うミニ公園、そしてサイクリングロードの休憩場所として利用されるホーム。それぞれの場所で、異なる形で越前平井駅の記憶が受け継がれているのです。

参考文献

島津敞史『汽笛百年ふくい鉄道史』福井新聞社、1982年
寺田裕一『新 消えた轍-ローカル私鉄廃線跡探訪-』 7 北陸、ネコ・パブリッシング、2010年
* 『ふくいの鉄道160年』鉄道友の会福井支部、2015年

これらの文献は、越前平井駅の歴史をより深く理解する上で貴重な資料となります。 廃線となったローカル線の歴史を辿る旅は、過ぎ去った時間への郷愁と、未来への希望を繋ぐ旅と言えるでしょう。そして越前平井駅は、その旅路の重要な一コマを担っていると言えるのではないでしょうか。

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