越後騒動

越後騒動：高田藩を揺るがしたお家騒動の全貌

越後騒動は、江戸時代前期の越後国高田藩（現在の新潟県上越市）で発生したお家騒動です。一門や重臣たちが激しく対立し、幕府の介入を招き、最終的には藩の改易という厳しい処分が下されました。この騒動は、当時の政治情勢や藩政の課題を浮き彫りにする出来事でした。

騒動の背景

騒動のきっかけは、寛文5年（1666年）の大地震で筆頭家老の小栗正重と次席家老の荻田長磐が圧死したことでした。その後、小栗正重の嫡男である小栗正矩が藩政を主導するようになります。小栗は、幕府から5万両を借りて高田の復興に尽力し、区画整理や直江津の築港、新田開発など様々な事業を展開しました。江戸の殖産家である河村瑞賢を招き、中江用水などの用水路開削も行っています。

しかし、小栗の政策は必ずしも藩士全員に歓迎されたわけではありませんでした。特に、藩士の禄を地方知行制から蔵米制に移行したことで、収入が減少する者が現れ、小栗への不満が高まりました。また、小栗自身の贅沢な生活や傲慢な態度も反感を買い、藩主である松平光長の異母妹を妻にしたことも、後の騒動の一因となりました。

お家騒動の勃発

延宝2年（1674年）、光長の跡継ぎである綱賢が後継者を残さずに死去したことで、後継者問題が浮上しました。候補者として、永見万徳丸（後の綱国）、永見長良、小栗大六、松平義行らが挙げられましたが、最終的に万徳丸が跡継ぎに決定しました。しかし、この決定に不満を持つ者たちが、小栗が自分の子である大六を跡継ぎにしようと企んでいるという噂を流し、家中は混乱しました。

このような状況の中、荻田長磐の子である荻田本繁や岡嶋壱岐ら重臣たちは、長良を擁立し、「お為方（永見大蔵派）」を名乗って小栗一派を「逆意方」と呼び、対立を深めていきました。延宝7年（1679年）には、お為方が光長に小栗の悪政を訴え、隠居を要求する事態に発展しました。光長は小栗に隠居を命じますが、騒動は収まらず、幕府に裁定を委ねることになります。

幕府の裁定と再審

幕府は当初、両派に和解を促しましたが、騒動は収まりませんでした。延宝8年（1680年）、将軍が徳川家綱から異母弟の綱吉に代わると、事態は急変します。綱吉は、以前の裁定に不満を持っており、お為方の訴えを受けて再審を行うことを決定しました。

再審の結果、小栗父子は切腹、お為方の長良や荻田らは遠島という厳しい処分が下されました。また、光長も責任を問われ、官位を剥奪され、越後高田藩は領地を没収されるという処分を受けました。この一連の処分は、綱吉の強い意志によるものであり、当時の幕府権力の強大さを示すものでもありました。

高田藩の改易とその後

高田藩の改易後、領地は幕府の直轄領となり、その後、別の藩主が配置されました。光長は後に罪を許され、復位復官しましたが、高田藩に戻ることはありませんでした。その後、光長の養子となった松平宣富が美作津山に10万石を与えられ、津山藩が成立しました。

越後騒動は、高田藩にとって大きな痛手であり、その後の藩政に大きな影響を与えました。また、この騒動は、幕府の権力や大名家の内紛など、江戸時代の政治情勢を反映する出来事として、歴史に名を残しています。

参考文献

海音寺潮五郎 「列藩騒動録」新潮社 1965年 のち講談社で文庫
会津藩編集方「会津藩家世実紀」吉川弘文館 (1975-89)

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