小栗正矩

小栗正矩：越後高田藩を復興させた筆頭家老

小栗正矩（おぐり まさのり）は、江戸時代前期の越後国高田藩（現在の新潟県上越市）において、筆頭家老として藩政を主導した人物です。通称は美作（みまさか）で、その治績は越後国の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと家督相続

寛永3年（1626年）、高田藩の筆頭家老である小栗正重（五郎左衛門）の長男として生まれました。母は附家老である本多成重の娘、真珠院です。小栗家は1万7,000石を知行する名門であり、正矩は幼い頃から将来を嘱望されて育ちました。

寛文5年12月（1666年2月）、越後高田地震が発生し、高田藩は甚大な被害を受けます。この地震により、父の正重と荻田隼人が倒壊した家屋の下敷きとなり、共に亡くなるという悲劇に見舞われました。正矩は父の跡を継ぎ、小栗家の家督と高田城代の役職を引き継ぎました。また、荻田隼人の跡は、その息子である荻田主馬が継ぎ、清崎城代となりました。

藩政改革と治績

正矩は藩政を主導するようになると、まず地震からの復興に尽力しました。幕府から5万両を借り受け、高田の町の復興に充て、区画整理を断行しました。この区画整理は、現在の上越市の市街地の基礎となっています。また、藩士の禄を地方知行制から蔵米制に改め、財政の安定化を図りました。

その他にも、直江津の築港、関川の浚渫、新田の開墾、特産品（たばこ）の振興、銀の発掘など、多岐にわたる事業を推進しました。江戸の殖産家である河村瑞賢を招き、中江用水などの用水路を開削し、農業の発展にも大きく貢献しました。これらの治績により、高田藩の経済は大きく発展し、領民の生活も向上しました。

評価と越後騒動

正矩の藩政改革は、高田藩の発展に大きく貢献しましたが、同時に多くの反発も招きました。蔵米制への移行は、多くの藩士にとって減収となり、小栗に対する不満が高まりました。また、正矩自身が贅沢好きで傲慢な性格であったことも、藩士からの反感を買う一因となりました。さらに、藩主である松平光長の異母妹、閑を妻にしたことが、後の越後騒動の原因の一つになったとも言われています。

越後騒動とは、松平光長の治世下で起こったお家騒動であり、正矩の政策に対する不満や、藩主の継承問題などが複雑に絡み合って発生しました。この騒動により、正矩は失脚し、高田藩を去ることとなりました。

まとめ

小栗正矩は、越後高田藩の発展に大きく貢献した一方で、その政策が多くの反発を招き、悲劇的な結末を迎えた人物です。彼の治績は、現在の上越市の発展の礎となっていますが、その評価は賛否両論あります。しかし、彼の功績と過ちを知ることは、歴史を学ぶ上で重要な意味を持つと言えるでしょう。

参考文献

東京大学史料編纂所所蔵『小栗家譜』

関連項目

越後騒動

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