足守藩

足守藩の概要

足守藩（あしもりはん）は、岡山県に位置し、備中国賀陽郡と上房郡の一部を治めていた藩です。藩庁は足守陣屋に置かれ、一時期は領地の大部分が陸奥国に移されました。藩主は木下家に属し、江戸時代を通じてその家系が存続しました。

藩の成立と歴史的背景

足守藩は、豊臣秀吉の正室である北政所の兄にあたる木下家定が、慶長6年（1601年）に播磨国姫路からこの地に転封されることで成立しました。家定は当初、2万5千石を持ち、足守に陣屋を築いたのです。しかし、慶長13年（1608年）に家定が亡くなると、幕府はその遺領を長男勝俊と次男利房に分けるよう指示しました。勝俊が独占したことが原因で、藩は慶長14年（1609年）に改易されてしまいます。

その後、慶長15年（1610年）に木下家の縁者である浅野長政の次男・長晟が2万4千石で入部しましたが、天候や経済的な理由で藩の安定は一時的なものでした。さらに、1613年には公儀御料に編入され、その後木下家が再び2万5千石で足守に封じられました。これ以後、267年間にわたり、木下家が藩主として在封しました。

財政の困難と復興

足守藩は、長い間経済的な困難に直面しました。特に、9代藩主利徽の時代、寛政11年（1799年）に約2万2千石が陸奥国に移されたことが財政を圧迫しました。このため、藩内の回復が歴代藩主にとって悲願となりました。11代藩主利愛の天保2年（1831年）には、藩主の嘆願によって一部の領土が戻されますが、全ての旧領が回復されたのは明治3年（1870年）になってからでした。

明治時代の変遷

明治4年（1871年）に廃藩置県が施行され、足守藩は最終的に岡山県に組み込まれました。藩主家は、明治2年に最後の藩主利恭が藩知事となり、華族に列せられました。その後、明治17年には子爵に叙爵されています。

足守藩と文化

足守藩からは幕末に適塾を開いた緒方洪庵が生まれ、その功績は評価されています。また、足守の文化も色濃く残っており、小説『剣客商売』の主人公、秋山小兵衛が足守木下家に庇護されるという形で記録されているのです。

足守の観光名所

足守には観光スポットも多数存在します。例えば、近水園は陣屋に隣接する美しい大名庭園です。また、足守文庫では藩主の遺品や資料が収蔵・展示されており、歴史を身近に感じることができます。木下利玄の生家や家老・杉原家の旧邸宅も見どころです。さらに、大光寺は木下家の菩提寺であり、多くの訪問客が訪れています。

足守藩は、その興隆と没落、そして文化的意義を色濃く持つ歴史的な存在として知られています。

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