足長手長

足長手長（あしながてなが）の世界

足長手長とは、古代の中国と日本において伝えられている妖怪の総称で、主に足長人（あしながじん）と手長人（てながじん）という二つの種類から成り立っています。それぞれ名前の通り、特に脚と手が長いという特徴があります。

妖怪の起源と伝説

足長人は「足長国」の住人、手長人は「手長国」の住人とされており、互いに協力して生活を送っているとされています。この二種類の妖怪についての記録は、中国の古代地理書『山海経』にさかのぼることができ、そこで紹介されている長股（ちょうこ）や長臂（ちょうひ）という異国の人物が起源と考えられています。

王圻による中国の『三才図会』や、日本で江戸時代に編纂された『和漢三才図会』の中では、足長人が「長脚」（ちょうきゃく）、手長人が「長臂」（ちょうひ）と記載され、それぞれの足と腕の長さが具体的に記されています。例えば、足は約9メートル（3丈）、腕は約6メートル（2丈）とされており、非常に印象的な庶民の想像力を掻き立てる存在です。

特に、足長人が手長人を背負い、共に海で漁を行うという特徴が強調されています。この様子は、江戸時代に設置された「荒海障子」にも描かれており、日本美術の一つの題材となっています。

文献と作品

中世の説話では、龍宮に足長と手長が存在し、龍王の使いとして描かれています。一方で、平賀源内が執筆した戯作『風流志道軒伝』や、有名な浮世絵師たちによって描かれた作品にも、足長と手長の姿が見られます。特に、葛飾北斎や河鍋暁斎の作品の中では、これらの妖怪が登場し、長い手足を持つ異形の者たちが描かれています。

また、中国の王宮で描かれる絵画には、奇仙や異人、仙霊を題材にした作品があるという風習があり、その影響を受けた日本の皇居の「荒海障子」も同様の話題で描かれていると考えられています。さらに、江戸時代に書かれた松浦静山の随筆『甲子夜話』には、ある武士が足長を目撃した話が記載されています。このエピソードでは、武士が九尺（約2.7メートル）の脚を持つ者を見かけた後に、天候が急変するという伝説的な体験が語られています。

このように、足長手長は単なる妖怪としての存在にとどまらず、古代から現代にかけて、多くの物語や作品として形を変えながら語り継がれています。与えられた形状や行動から、人々は長い脚や腕の特異な姿を通して、未知の世界への興味を持つことができたのでしょう。今後も、この妖怪の伝説がどのように解釈され、新たな物語が生まれるのか、注目が集まります。

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