車両通行帯

車両通行帯：日本の道路交通法における定義と通行ルール

この文書では、日本の道路交通法における重要な概念である「車両通行帯」について、その定義、法的効力、通行ルール、関連する規制などを詳細に解説します。

車両通行帯の定義と法的効力

車両通行帯とは、道路標示（白線など）によって示された、車両が走行すべき道路の部分です。車線やレーンと呼ばれることもありますが、道路構造令における「車線」とは厳密に区別されます。道路交通法では、道路標示によって車両の走行すべき部分が示されている場合、その標示された部分が車両通行帯と定義されています。

重要なのは、この車両通行帯は公安委員会が道路標示として正式に指定することで初めて法的効力を持ちます。公安委員会による指定がない白線は、単なる区画線であり、車両通行帯に関する法令は適用されません。そのため、たとえ複数車線に見える道路であっても、公安委員会の指定がなければ、車線をまたいだ走行や、最右通行帯の走行は違反となりません。

2015年（平成27年）の裁判例では、公安委員会による指定がない道路では、車両通行帯に関する規制が適用されないことが明確に判示されました。

車両通行帯の幅員と指定要件

車両通行帯の幅員は、原則として3m以上とされていますが、道路状況によっては1m以上3m未満でも認められます。公安委員会は、道路の左側に2以上の車両通行帯を設けることなどを要件として、車両通行帯の設置を決定します。片側一車線の道路には車両通行帯は存在しません。

車両通行帯と車線の違い

「車両通行帯」は道路交通法の用語で、一方通行でない道路では中央線より左側の走行区域をさらに細分化します。一方、「車線」は道路構造令の用語で、道路全体の車線数を両側合計で数えます。中央線のない道路は1車線、片側1車線道路は2車線と数えられます。この違いを理解することは、交通ルールを正しく理解するために重要です。

車両通行帯における通行方法（道路交通法第20条）

道路交通法第20条は、車両通行帯のある道路における通行方法を規定しています。

原則（通則）：

軽車両、原動機付[[自転車]]、小型特殊[[自動車]]は、原則として第一通行帯を通行しなければなりません。
自動車は、速度に応じて第一通行帯以外の通行帯も通行できます。ただし、最右通行帯（追越車線）は、原則として追い越し時以外通行できません。

例外（第20条第3項）：

上記の原則は、以下の場合に適用されません。

追越しをする場合
交差点で右左折する場合
交差点の進行方向別通行区分に従う場合
進路変更禁止の標示がある場合
緊急車両に道を譲る場合
その他、やむを得ない場合（工事、駐車車両など）

追越し時は、直近の右側の車両通行帯を通行しなければなりません。同一車線内での追い越しや、車体の一部しか入っていない追い越しは違反となります。

専用通行帯、車両通行区分、その他規制

道路には、特定の種類の車両のみが通行できる専用通行帯（路線バス専用、自転車専用など）が設けられています。また、車両の種類によって通行帯が指定される車両通行区分、大型車など特定の車両に制限を設ける規制などもあります。これらの規制では、第20条の原則は適用されません。

専用通行帯の例:

路線バス専用通行帯
自転車専用通行帯
二輪車専用通行帯

車両通行区分の例:

速度別に車線を分ける
車種別に車線を分ける

その他:

牽引車の高速道路等における通行区分
路線バス等優先通行帯
進行方向別通行区分

これらの規制は、道路標識や標示によって示され、それぞれの規制に従って通行しなければなりません。

まとめ

車両通行帯は、道路交通の安全と円滑な流れを確保するための重要な要素です。公安委員会による正式な指定がなければ法的効力を持たないこと、そして様々な例外規定や専用通行帯などの規制の存在を理解することが、安全な運転に繋がります。道路標識や標示をよく確認し、状況に応じて適切な車線を選択することが大切です。

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