軍令部

軍令部の概要

軍令部（ぐんれいぶ）は、大日本帝国海軍における重要な軍令機関であり、海軍省が内閣に従属して軍政や人事を担当するのに対し、軍令部は天皇に直接報告し、海軍全体の作戦と指揮を統括していました。正式名称は海軍軍令部（かいぐんぐんれいぶ）であり、その長は通常、海軍大将または海軍中将が天皇によって任命されていました。次長は軍令部長を補佐し、二人は御前会議のメンバーとしても活躍していました。

軍令部の主な役割は、戦略の立案と作戦の実行であり、戦時においては連合艦隊司令長官が海軍全体の指揮を取りますが、作戦の目標は軍令部の計画に基づいて定められました。

歴史的背景

設立当初、海軍は陸軍に対して対等な地位を求めていました。特に日露戦争を控えた時期には、海軍の地位を向上させるために数々の提案が行われました。例えば、山本権兵衛海軍大臣は、海軍も参謀総長となり、帝国軍全体の指揮に関与できるようにしたいと訴えました。しかし、最初はこの提案は却下されましたが、時が経つにつれ、海軍は戦時大本営条例の改正を勝ち取り、一定の権限を得ることに成功しました。

その後、伏見宮博恭王の軍令部長就任によって、軍令部はさらに強化され、海軍の独立性が高まりました。それでも、組織としては陸軍の方が圧倒的に大きく、特に将校数において大きな差がありました。このため、海軍は常に陸軍に吸収される危険にさらされていました。

太平洋戦争と軍令部の役割

太平洋戦争が勃発すると、軍令部は連合艦隊司令部に引きずられることが多く、時には「連合艦隊司令部東京出張所」と揶揄されることもありました。開戦の内幕については、佐薙毅などの海軍幹部により後の反省会で証言が残されています。真珠湾攻撃やマレー沖海戦が行われた当初、軍令部は自らの作戦計画に基づいて行動していましたが、次第に連合艦隊の影響を受けるようになりました。

さらに、太平洋戦争の最中、海軍内部で権力集中を図る動きが見られました。例えば、東條英機首相の命令により、嶋田繁太郎海軍大臣が軍令部総長を兼任する際には、多くの反発がありました。なぜなら、この統合によって海軍の独立性が脅かされると懸念していたからです。最後には、戦後の終戦工作が困難となる可能性を指摘する意見もありました。

軍令部の解体

1945年（昭和20年）には軍令部は廃止され、戦史資料の焼却も行われました。この時、機密文書の焼却が命じられ、数多くの資料が失われました。軍令部の歴史は、海軍の運命を紡いできた重要なエピソードを多数含んでいます。

結論

軍令部は、海軍の戦略、運用、そして組織の独自性を確保するために設立された重要な機関でした。その役割や影響は、多くの歴史的な事件を通して今に至るまで語られています。

もう一度検索