軽駆逐戦車ヘッツァー

ヘッツァー：第二次世界大戦末期のドイツ軽駆逐戦車

ヘッツァー(Jagdpanzer 38(t))は、第二次世界大戦末期のドイツで生産された軽駆逐戦車です。その愛称である「ヘッツァー」(Hetzer)は、ドイツ語で「狩りの勢子」を意味し、本来は次世代軽駆逐戦車の計画名でしたが、この車両に定着しました。制式番号はSd.Kfz.138/2です。

開発の経緯と設計

ヘッツァーの開発は、ベルリンのアルケット社工場が爆撃でIII号突撃砲の生産を停止したことがきっかけでした。ドイツ陸軍はチェコのBMM社（ČKD社の再編）に生産を依頼しようとしましたが、同社は大型車両の生産能力が不足していました。そこで、より小型の38(t)n.A.偵察戦車のコンポーネントを用いた13トン級の軽突撃砲の開発が提案され、ヒトラーの承認を得て開発が開始されました。

多くの資料では、既存の38(t)戦車からの流用と解説されてきましたが、実際は「新型38(t)戦車」(38(t) n.A.)からの部品流用です。足回りの形状は酷似していますが、転輪の直径、起動輪の歯数、誘導輪、履帯など、多くの点で従来型とは異なっています。

ヘッツァーは、新型シャーシに傾斜装甲の戦闘室、そして48[口径]]75ミリ対戦車砲]を搭載しました。リーフスプリング式[[サスペンションは、38(t)系自走砲専用車台と同じものでしたが、ノーズヘビー気味であったため、1944年9月以降は前半部のバネが強化されました。

この車両は安価で生産性が高く、わずか4ヶ月で設計が完了し、実物大木型模型すら完成しないうちに1,000輌が発注されました。その後、月産1,000輌を目指しましたが、生産期間は約1年で、BMM社で2,047輌以上、シュコダ社で780輌以上が生産されました。

性能と運用

ヘッツァーは厚い前面装甲と薄い側・後面装甲を持つ、自走可能な対戦車砲と表現するのが適切でしょう。傾斜装甲によって防御力を向上させる工夫はされていましたが、戦闘室は非常に狭く、主砲の中心線ずれによって重量バランスも悪かったため、機動性は期待されたほど高くありませんでした。また、車体右側の死角が大きく、乗員の視界も悪く、評判は芳しくありませんでした。

そのため、ヘッツァーは待ち伏せ攻撃を得意とする「パックフロント」戦術が最適でした。小隊単位で互いの死角を補い、敵に集中砲火を浴びせることで高い戦闘力を発揮しました。

ヘッツァーはドイツ陸軍の戦車駆逐大隊、歩兵・国民擲弾兵師団の対戦車猟兵中隊、武装親衛隊の装甲擲弾兵師団などに配備され、ハンガリー軍にも75輌が供与されました。

バリエーションと戦後

ヘッツァーには様々なバリエーションが存在します。戦車回収車であるBergepanzer 38(t)、10.5cm突撃榴弾砲を搭載したStuH42/2、15cm重歩兵砲を搭載したJagdpanzer 38(t) sIG33/2、火炎放射戦車であるFlammpanzer 38(t)、そして主砲の砲架を簡素化した簡易生産型のJagdpanzer 38(t) Starrなどです。また、タトラ928ディーゼルエンジンを搭載したJagdpanzer 38(d)も計画されましたが、量産には至りませんでした。

戦後も、ドイツ軍向けの生産ラインを使ってST-Iとして150輌が追加生産され、訓練用のST-IIIも50輌が生産されました。スイスではG-13として採用され、シュコダ社によって1950年までに158輌が生産されました。

現存車両と登場作品

ヘッツァーは大量生産されたため、第二次世界大戦期のドイツ軍駆逐戦車の中で最も多くの車両が現存しています。多くの博物館に展示されているほか、個人所蔵の車両も多く存在します。また、ヘッツァーは数多くの映画やゲームなどに登場し、その存在感を示しています。

ヘッツァーは、その設計思想や性能、運用方法、そして戦後の歴史も含めて、第二次世界大戦末期のドイツ軍の状況を反映する重要な戦車の一つと言えるでしょう。その安価で大量生産された実態と、多くのバリエーション、そして現在まで残る多くの実車は、戦争の歴史を語る上で重要な証言となっています。

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