輸液加温器

輸液加温器

輸液加温器（ゆえきかおんき）は、医療機関において用いられる医療機器の一つであり、「輸血・輸液加温器」とも称されます。

機能と重要性

この機器の主要な機能は、患者さんへ投与する各種の液体、具体的には晶質液や膠質液、さらには血液製剤などを、体温に近い温度まで加温することです。

医療処置において、冷たい状態の輸液や血液を大量に体内に投与することは、患者の体温低下を招き、特に外傷を負った患者さんや外科手術中の患者さんにおいては、低体温症を引き起こすリスクを高めます。低体温は、血液凝固異常、心血管系の合併症、免疫機能の低下など、様々な重篤な合併症に繋がりうるため、体温の維持は非常に重要です。

輸液加温器は、これらの液体を静脈内投与あるいはその他の非経口的な経路で患者に与える前に適切な温度にすることで、冷たい液体の流入による熱損失を防ぎ、低体温の発症を予防または軽減することを目的としています。

規制上の位置付け

輸液加温器は、アメリカ食品医薬品局（FDA）によって規制されている医療機器であり、特定の製品コード（LGZ）が付与されています。これらは、「特別な配慮を要する未分類医療機器」というカテゴリーに分類されており、アメリカ合衆国内で合法的に販売を行うためには、FDAによる510(k)クリアランスと呼ばれる市販前届出プロセスを経て承認を得る必要があります。

加温方式による分類

輸液加温器は、その加温方法によって主に二つのタイプに分けられます。

1. 使用前加温タイプ:
このタイプは、実際に輸液を患者に投与を開始する前に、輸液バッグやボトルなどの内容物全体を機器内で事前に加温する方式です。一般的には、機器内部に設けられた水槽のような構造に輸液容器を浸したり、あるいは温められたプレートやブロックの上に置いたりすることで熱を伝達します。

2. インライン加温タイプ:
インライン加温タイプは、輸液セットまたは輸血セットの途中に組み込まれた専用の加温回路を用いて、輸液が患者の体内へ流れていくその過程で直接、積極的に加温を行う方式です。このタイプは、必要に応じてリアルタイムで加温が可能であり、比較的高流量での投与にも対応しやすい特徴があります。

どちらのタイプも、患者の安全性を確保し、良好な臨床転帰を得るために、医療現場で重要な役割を担っています。

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