辰巳用水

辰巳用水

辰巳用水は、石川県金沢市を流れる、全長約11kmの用水路です。1632年、加賀藩三代藩主前田利常の命を受け、板屋兵四郎によって完成しました。この用水路は、1631年に発生した金沢大火を契機に、金沢城の防火用水と城下への生活用水を確保する目的で建設されました。

概要

辰巳用水は、犀川上流の金沢市上辰巳から取水し、約4kmの導水トンネルを経て小立野台地に到達します。その後、兼六園の園内を流れる曲水となります。かつては、導水管を通じて金沢城内に水を供給し、さらに市中に配水していました。

金沢城は堀に囲まれていましたが、板屋兵四郎は水の高低差を利用して、金沢城内に水を吹き出させることに成功しました。これは、取水口が金沢城よりも高い位置にあることを利用した、逆サイフォンの原理（当時は「伏越の理」と呼ばれていました）を用いたものでした。

当初、用水路には木管が使用されていましたが、後に石管へと替えられました。この石管は、金沢市内の石川県立歴史博物館の中庭などで保存されています。

建設当初、取水口は犀川上流の雉に設けられていましたが、1837年と1855年の二度にわたり付け替え工事が行われ、より上流へと移動しました。現在の取水口は、辰巳ダム計画によって水没する可能性がありましたが、計画変更により存置されることとなりました。

1950年代頃から、地表部分への生活排水の流入が目立つようになり、兼六園の曲水にも悪影響が出始めました。そのため、地表部分の大部分には、兼六園専用のバイパスが並行して埋設されました。

石管には、富山県砺波市で産出された金屋石が使用されており、富山県十二貫野用水の第一分水である龍の口用水で用いられた技術が応用されています。

史跡指定等

2010年2月、辰巳用水の全長約11kmのうち、上流部および中流部にあたる約8.7kmが、江戸時代の土木技術を知る上で貴重であるとして、国の史跡に指定されました。

2018年には、土木学会選奨土木遺産にも選ばれています。

出典

参考文献

学研まんがひみつシリーズ『NHKハテナゲーム 魔法実験のひみつ』104 - 105頁（「空気と水の魔法実験」の章でサイフォンについて解説する際、辰巳用水を例として挙げている）

関連文献

青木治夫「江戸期・明治期辰巳用水の維持管理と保守工事」『土木史研究』第10巻、土木学会、1990年、85-91頁、doi:10.2208/journalhs1990.10.85。
青木治夫「辰巳用水の施工環境」『日本土木史研究発表会論文集』第8巻、土木学会、1988年、40-46頁、doi:10.11532/journalhs1981.8.40。

関連項目

犀川 ([[石川県)]]
金沢城
兼六園
中部地方の[[史跡一覧]]
辰巳ダム

外部リンク

辰巳用水 - 金沢市文化スポーツ局歴史都市推進課
「辰巳用水」の才、板屋兵四郎（2013年5月1日時点のアーカイブ） - 石川新情報書府（石川県）
* いしかわGOODニュース「辰巳用水を観光資源に」（2012年12月19日時点のアーカイブ） - NHK金沢放送局（2010年5月11日）

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