農地中間管理機構

農地中間管理機構は、「農地バンク」という通称で広く認識されている組織です。この組織は、日本の農業が直面する様々な課題、特に高齢化による後継者不足や耕作放棄地の増加に対応するため、「農地中間管理事業の推進に関する法律」に基づき設立されました。各都道府県に一つ設置されており、都道府県知事が指定します。機構の最も重要な役割は、農業をリタイアする方や耕作できない方が所有する農地を一時的に借り受け、これらの農地を効率的に活用できる意欲ある農業の担い手へと円滑に引き渡す、「中間的な受け皿」としての機能です。これにより、耕作放棄地の発生を抑制し、担い手への農地集積を促進することを目的としています。

この事業は、2014年（平成26年）3月1日に「農地中間管理事業の推進に関する法律」が施行されたことに伴い、本格的に開始されました。法律の施行から5年後には、これまでの事業実施状況を踏まえた見直しが行われ（2019年）、実効性のある事業推進のための改善が図られました。また、地域の実情に合わせて、体制強化を進める動きも見られます。例えば、2021年（令和3年）4月1日には、兵庫県において農地バンク機能を持つ組織と農業会議所が合併し、「ひょうご農林機構」という新たな組織が発足しました。これは、より幅広いサービスを一体的に提供できる体制を構築する試みと言えます。

農地中間管理機構が担う具体的な業務は多岐にわたります。地権者から農地を借り入れる際には、その農地の状況を調査し、適正な条件で契約を締結します。受け入れた農地は、必要に応じて利用しやすい状態にします。その後、これらの農地を、認定農業者や集落営農組織など、地域の主要な担い手に対して、利用計画に基づき適切に貸し付けます。貸付にあたっては、担い手の経営規模拡大に繋がるよう、まとまった形で提供することを目指します。また、農地の所有者と利用者の間の調整役として、貸付期間中のトラブル対応なども行い、農地の流動化を促進します。

農地中間管理機構の事業は、日本の農業全体の構造改革を進める上で重要な位置を占めています。これは、戦後の「農地改革」が農地の所有構造を大きく変えたように、現在の農地利用のあり方を大きく変革しようとする取り組みと言えます。また、国の成長戦略である「日本再興戦略」においても、農業の競争力強化、特に担い手への農地集積は、重要な柱の一つとされています。農地中間管理機構は、地域の農業委員会とも連携しながら、地域における農地の利用最適化計画の実現に向けて活動しています。

今後、農地の担い手への集積をさらに加速させ、耕作放棄地を一層削減していくためには、機構の事業をより積極的に活用していくことが不可欠です。高齢化が進む地域における小規模分散した農地の集約など、課題に応じたきめ細やかな対応が求められます。農地中間管理機構は、これらの課題解決に向けた調整機能と専門知識を活用し、持続可能で活力ある地域農業の実現に貢献していくことが期待されています。

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