農水産業協同組合貯金保険機構について
農水産業協同組合貯金保険機構は、1973年9月に設立された
認可法人で、農水産業協同組合に対して貯金保険を提供することにより、貯金者や信用秩序を保護することを目的としています。この機構は、農業協同組合や
漁業協同組合などの経済的な安全性を確保し、信頼性を維持するために重要な役割を果たしています。
出資構成
この機構の資金の構成は、農協や漁協などの保護対象団体が半分を出資し、
日本銀行と日本政府がそれぞれ4分の1ずつを出資しています。これは、農協などが信用事業だけでなく、共済事業や農産物の流通など多岐にわたる経済業務を行っているため、独自のリスク構造に対応するための措置です。
貯金保険制度と預金保険制度
農水産業協同組合貯金保険機構が提供する制度を「貯金保険制度」と呼び、一般的な預金保険機構の制度は「預金保険制度」と区別されます。この二つの制度は目的が似ていますが、農水産業協同組合特有の事情を考慮したものであるためカスタマイズされています。
貯金保険制度の概要
貯金保険制度は、基本的に預金保険制度の保護範囲や金額とほぼ同じです。しかし、保険料率は預金保険制度と比較して低く設定されており、例えば2011年度の一般預金の保険料率は、預金保険制度が0.082%だったのに対し、貯金保険制度は0.014%でした。
破綻処理の方法には「資金援助方式」と「保険金支払方式」があり、それぞれ異なるアプローチで破綻した農協等を救済します。
資金援助方式
この方式では破綻した農業協同組合と合併する農業協同組合に、預金保険に相当する額の資金援助が行われます。農協などが債務超過と認められる場合や、払戻し停止が懸念される場合などに適用され、業務運営が不適切な場合には管理人が選任されます。その後、民事再生手続きが申立てられることで、合併や資金援助が進められ、貯金は原則として全額保護されます。
保険金支払方式
この方式では、機構が直接貯金保険金を支払い、破産手続きが進められます。主に「第一種保険事故」(貯金払戻しの停止)や「第二種保険事故」(農業協同組合の解散など)に基づいて処理が行われます。
危機対応の仕組み
危機的な状況に対処するため、農水産業協同組合貯金保険法第97条に基づき、経営が困難な農協に対して優先出資や資金援助などの手段があります。これらは、農水産業協同組合やその関連機関が円滑に業務を続けられるように配慮された仕組みになっています。
この機構は、特に農業や漁業の安定性を守るために設立されたものであり、地域経済や利用者の利益を保護することに貢献しています。さらに、
農林中央金庫や各協同組合も加入の対象としており、農水産業の活性化を図っています。