農薬取締法

農薬取締法（のうやくとりしまりほう）は、昭和23年7月1日に法律第82号として制定された日本の法律です。この法律は、農業で使用される農薬の品質管理や安全確保を目的とし、その製造、販売、そして使用に関する様々なルールを定めています。

主な目的として掲げられているのは、農業生産を安定させること、農薬の使用による国民の健康への影響を防ぐこと、そして私たちの生活環境を良好に保全することです。これらの目的を達成するために、農薬の登録制度が設けられ、販売や使用の方法に規制を加えることで、市場に出回る農薬の品質を適正に保ち、使用者による安全かつ正しい取り扱いを確保することを目指しています。

所管官庁

本法律の運用は、主に農林水産省の消費・安全局農産安全管理課農薬対策室が担当しています。しかし、農薬の毒性や環境への影響に関する事項、特に登録の可否を判断するための残留基準の設定などについては、環境省の大臣官房環境保健部化学物質安全課が共同で関与し、実務の一部を担っています。

法律の概要

登録制度

農薬を国内で製造、加工、あるいは海外から輸入するためには、農林水産大臣の登録が必須です。この登録に先立って行われる農薬の品質や安全性に関する検査は、独立行政法人である農林水産消費安全技術センターが実施しています。また、環境大臣は、農薬が人や環境に与える悪影響を防ぐために、食品への残留濃度などの基準（登録保留基準）を定めており、この基準を満たしているかどうかが登録の重要な判断材料となります。

販売および使用に関する規制

農林水産大臣と環境大臣は連携し、農薬の登録保留基準を満たしつつ、安全かつ効果的に使用するための具体的なルールである「使用基準」を定めます。この基準には、対象となる病害虫の範囲、使用できる時期、方法などが含まれます。

農薬を販売（たとえ無償で譲る場合でも）する事業者は、事前の届け出が義務付けられています。さらに、農薬の容器や包装には、農林水産大臣の登録番号、成分の種類や含有量、毒性や危険性がある場合の表示、そして有効期限（最終有効年月）などの情報を正確に記載することが義務付けられています。特に、定められた使用基準も併せて表示する必要があります。

農薬を使用する者は、こうした必要な表示がなされている農薬以外を使うことは原則として禁止されています。また、定められた使用基準に違反した使用も許されません。例えば、登録されていない作物に使うことや、規定量を超えて多量に使用したり、頻繁に使いすぎたりする行為は、すべて法律違反となります。

特定農薬の例外

ただし、人の健康や環境に対して害を及ぼす心配がほとんどないと明確に認められている物質や天敵生物などは「特定農薬」として指定されており、これらに関しては原則として上記のような厳しい規制は適用されません。現在、重曹や食酢、使用場所の周辺に生息する天敵生物などが特定農薬として指定されています。

罰則

本法律の禁止規定に違反した場合、違反者は3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります。

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