辻 (那覇市)

沖縄県那覇市 辻：歴史と文化が交錯する地

沖縄県那覇市にある辻は、一丁目から三丁目までを含む地域で、かつては遊郭として、戦後は風俗街として知られています。この地は、琉球時代から現代に至るまで、様々な歴史の波に翻弄されながらも、独自の文化を育んできました。

地理的特徴と概要

辻は、那覇市の中心部から西に位置し、国道58号線を挟んで久米や若狭といった地域と隣接しています。周辺は歓楽街としての様相を呈していますが、辻自体は風俗街としての特徴が色濃く残っています。かつては遊郭として栄え、多くの人々が行き交う場所でした。現在では、商業地域として都市計画がされていますが、市営住宅や老人福祉施設も存在し、地域住民の生活の場ともなっています。

歴史

先史時代から琉球王国時代

辻を含む一帯は、元々海面下にありましたが、約1000年前から現在の地形に近い形になったとされています。1700年頃には大きな島を形成し、1853年の測量図にもその姿が描かれています。その後、漫湖などの内海が埋め立てられ、現在の地形へと変化しました。

1672年、琉球王国の摂政であった羽地朝秀によって、各地にいた尾類（ジュリ）と呼ばれる女性たちが集められ、この地に遊郭が設けられました。これは、冊封使や薩摩の役人、商人などを歓待するため、そして一般の女性を性犯罪から守るための措置でした。遊郭は、琉球風だけでなく中華風の名前を持つ建物もあり、賑わいを見せました。

明治時代から戦前

明治維新後、琉球処分によって沖縄県となると、辻は日本の法規制下に置かれることになりました。それでも、辻は遊郭街として発展を続け、1934年頃には176軒以上の遊郭が軒を連ねるまでになりました。その繁栄ぶりは、沖縄県の年間予算の5%に相当する税収をあげるほどでした。

しかし、太平洋戦争が勃発すると、1944年10月10日の空襲によって辻は焼失し、遊郭としての歴史に幕を閉じました。

戦後

戦後、辻は米軍の駐留地として、再び歓楽街として復活を遂げました。1952年には料亭「松の下」が建設され、その後もバーやクラブなどが次々とオープンしました。ベトナム戦争時には、駐留米兵を相手にした売春が横行し、最盛期には辻一帯に約800人の売春婦が存在したとされています。

1970年に売春防止法が制定され、1972年の沖縄返還によって日本の法律が適用されると、表向きには売春は行われなくなりました。しかし、現在でもソープランドなどの風俗店が多く存在し、その名残をとどめています。

遊郭の文化

辻の遊郭は、単なる売春の場ではなく、琉球独特の歌舞や料理でもてなす文化的な側面も持っていました。遊女たちは「尾類（ジュリ）」と呼ばれ、歌舞音曲や作法を身につけていました。辻では、遊女による自治が行われており、女性たちが組織を運営していました。貧しい家庭から売られた少女たちが、遊郭で働き、自らの稼ぎで自由の身になることもありました。しかし、そこには前借金による束縛など、厳しい現実もありました。

ニービチジュリ

沖縄には、結婚式の夜に新郎が友人たちと辻の遊郭に繰り出す「ニービチジュリ」という習慣がありました。これは、新郎の性行為の腕を鍛えるという意味合いがあったとされています。

生殖器崇拝

辻には、男根石が祀られている拝所がありました。これは、豊作を祈願する信仰に由来すると考えられています。

現在の辻

現在の辻は、ソープランドなどの風俗店が多く集まる地域となっています。かつての賑わいは失われつつありますが、その歴史を物語る痕跡は、今もなお、街のあちこちに見ることができます。

アクセス

ゆいレール旭橋駅が最寄り駅です。バスの場合は、三重城バス停行きの市内線が利用できます。

その他

辻には、波の上自動車学校や、老人福祉施設、ホテルなどがあります。また、近隣には波上洞穴遺跡やセーコージヤマ遺跡などの史跡も存在します。

辻は、沖縄の歴史と文化を色濃く残す地域です。その複雑な歴史背景を知ることで、沖縄の文化への理解を深めることができるでしょう。

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