辻本憲三

辻本憲三：カプコンを世界へ導いた起業家

辻本憲三（つじもと けんぞう）は、1940年生まれの実業家であり、株式会社カプコンのCEOとして知られています。また、コンピュータソフトウェア著作権協会（ACCS）の理事長や、コンピュータエンターテインメント協会（CESA）の前会長も務めました。

生い立ちと起業

奈良県橿原市で生まれた辻本は、幼少期に父親を亡くし、中学卒業後には家計を支えるために働きながら定時制高校に通いました。その後、食品卸会社勤務を経て菓子卸業で独立するも、経営難に陥ります。しかし、大阪で始めた菓子小売店で綿菓子製造機が人気を博したことから、ビジネスのヒントを得ます。全国を行商する中でパチンコ台の改造に携わった経験から、ゲーム業界の将来性に着目しました。

ゲーム業界への参入とカプコンの創業

1974年にIPM（後のアイレム）を創業し、社長に就任。その後、アイ・アール・エム（IRM）を設立し、インベーダーゲームの流行期にはタイトーからライセンスを受け、関連製品をリリースしました。しかし、インベーダーブームの終焉とともにアイレムを去ることになります。

1983年、サンビの販売会社としてカプコンを創業し、代表取締役社長に就任。メダルゲーム「リトルリーグ」を発売後、開発会社であるサンビを吸収合併し、社名をカプコンに変更。以降、『ストリートファイター』や『バイオハザード』など、数々の大ヒットゲームを世に送り出し、カプコンを世界的なゲーム企業へと成長させました。

ワイナリー経営

1990年代には、個人事業としてワイナリー「ケンゾー エステイト」を設立。カプコンの事業で遊休地となっていたカリフォルニア州ナパの土地を買い取り、私財を投じて開墾。高品質なワインを生産し、国際的な評価を得ています。

経営哲学と人物像

辻本の経営手法は、開発現場や販売状況のデータを数値化し、詳細な状況と全体像を把握することにあります。また、新興国での海賊版に対しては、将来的な市場の成長を見据えて寛容な姿勢を示すなど、独自の視点を持っています。

受賞歴とメディア出演

紺綬褒章や藍綬褒章を受章。テレビ東京の経済番組「カンブリア宮殿」にも出演し、その経営手腕が紹介されました。

辻本憲三は、綿菓子機からゲーム業界へ、そしてワイナリー経営へと、常に新しい分野に挑戦し、成功を収めてきた稀有な起業家です。その柔軟な発想と、時代を見抜く力は、多くの経営者にとって参考になるでしょう。

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