辻清明 (陶芸家)

辻 清明：日本の陶芸を代表するアーティスト

辻 清明（つじ せいめい、本名：つじ きよはる、1927年1月4日 - 2008年4月15日）は、日本の著名な陶芸家で、特に彼の作品に表現された「明る寂び」の美意識で知られています。また、東都の陶芸界における重要な人物でもあり、東京都の名誉都民としても称えられました。

生い立ちと背景

辻清明は東京府荏原郡、現・東京都世田谷区に生まれました。彼は4人兄弟の末っ子であり、姉に陶芸家である辻輝子を持ち、陶芸の道に早くから親しむこととなります。幼少期から父・清吉と母・とみに育てられ、父が骨董や古美術を愛し、その影響を受けて、辻清明も陶芸に魅了されるようになります。特に、最初に父に買ってもらったのは、著名な陶芸家・野々村仁清の「色絵雄鶏香炉」でしたが、この作品は戦火によって失われてしまいました。

清明は、学校に通うことなく陶芸を学び、1941年には姉と共に「辻陶器研究所」を立ち上げ、倒焰式窯を設立しました。この時期に富本憲吉や板谷波山に師事し、陶芸の基礎を築きました。

作陶のスタイルと影響

辻清明の陶芸は、信楽の土を使用した焼締を中心に展開され、特に「明る寂び」という独自の美意識を追求しました。彼の作品は、シンプルさと深い思索を融合させ、見る者に心の安らぎをもたらすものでした。近年では、帝京大学における茶会などでも彼の作品が使われ、その魅力が再評価されています。

国際的な評価

彼の作品は、国際的にも高く評価されており、1963年にはアメリカ合衆国のホワイトハウスに「緑釉布目板皿」が収蔵されました。また、1965年にはインディアナ大学美術館、1973年にはイタリアのファエンツァ陶芸博物館にも作品が納められました。

2001年にはドイツでの日本現代陶芸展に招待され、多くの国際展でその名を広めました。特に彼の作品は、日本の伝統陶芸に現代的な感覚を取り入れたもので、多くの陶芸ファンに支持されています。

著作と業績

辻清明は、多くの書籍を著し、陶芸に対する深い知識と愛情を伝えました。主な著書には、『趣味のやきもの作り』（1963年）、『肴と器と』（1985年）、そして自伝である『焱に生きる 辻清明自伝』（1996年）があります。これらの著作は、陶芸界の後進の指導に寄与するとともに、彼の作品への理解を深めるための重要な資料となっています。

最期と追悼

辻清明は2008年に肝臓がんのため81歳で亡くなりました。彼の死後、家族や陶芸界は彼の功績を称え、2017年には彼の没後10年を記念した「陶匠 辻清明の世界 - 明る寂びの美」が東京国立近代美術館工芸館で開催されました。この展覧会では、彼の作品やその魅力が改めて評価され、多くの人々に感動を与えました。

辻清明の陶芸は、日本文化の重要な一部としてこれからも受け継がれていくことでしょう。

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