近代レバノンの歴史

近代レバノンの歴史

近代レバノンの歴史は、1517年から1918年にかけての約400年間にわたる出来事を通じて、オスマン帝国の統治からフランスによる委任統治までを探るものです。この期間には、地域の多様な宗派間の対立や政治的動向が影響を与え、現代のレバノンの基礎が形成されていきました。

オスマン統治の開始 (1517-1618)

オスマン帝国は1517年にマムルーク朝を滅ぼし、現在のレバノンをその領土に組み込みました。しかし、地理的要因から沿岸部と内陸部では社会環境が大きく異なり、特にレバノン山脈周辺は多様な宗派が共存する独自の文化を育んでいました。オスマン帝国のシリア州では、ティマール制が施行され、直接的な支配が行われましたが、山岳レバノンではミッレト制度が維持されました。このため、それぞれの宗派は自らの信仰を守りながら文化を発展させることができました。

レバノン首長国の設立 (1618-1842)

オスマン帝国の衰退とともに、レバノンでは地方有力者が台頭しました。特にマーン家やシハーブ家が知られています。マーン家の統治下で、ファハル・アッディーン2世は自身の軍を育成し、オスマン帝国に挑戦しました。彼の軍事的成果により、南レバノンやシドンを手中に収めましたが、最終的には帝国の反発を受けることになります。

シハーブ家のバシール・シハーブ2世はエジプトとの親交を通じて、政治的な力を強化しました。彼は内政を安定させ、さらなる勢力拡大を目指しましたが、エジプトとの連携がレバノンの統治に影響を与えることになります。

列強の介入と文化的遺産 (1842-1918)

1842年以降、ヨーロッパ列強の介入は顕著になり、特にキリスト教徒とムスリムの間の利害対立が深まります。この時期、山岳レバノンでの自治権が神聖視され、経済的な繁栄をもたらしました。文化的なナショナリズムが高まり、アラブ知識人による活動が活発化しました。

1861年には「組織規約」が署名され、自治権が保証されましたが、その後も宗派間の緊張は続きました。特に1860年の虐殺事件により、列強の介入が加速します。文化的な統一を求める運動は、より大きな政治的要求へと拡大していきました。

結論

レバノンの近代史は、国の形成における宗教的・社会的なダイナミクス、地理的要因、及び外圧による影響が交錯する複雑なプロセスでした。オスマン帝国からフランスの委任統治へと移行する中で、レバノンは独自の文化やアイデンティティを育み、現代的な国家としての道を歩み始めます。

もう一度検索