近江の戦い

近江の戦い

近江の戦い（おうみのたたかい）は、建武政権期に行われた重要な戦闘であり、南北朝時代の歴史においてその名を刻んでいます。この戦闘は1336年の9月中旬から29日まで、現在の滋賀県近江国で、新田義貞や脇屋義助といった建武政権の指導者たちと、足利方の小笠原貞宗や佐々木導誉との間で展開されました。この戦いは、建武の乱の末尾を飾り、後に足利方への降伏を余儀なくする結果となりました。

戦いの背景

建武の乱は前年末から続く戦乱で、特に1336年に入ってからは、足利側の足利尊氏や足利直義が九州から本州に戻り、湊川の戦いや第二次京都合戦といった一連の戦闘で勝利を収めていました。その一方で、建武政権は首都京都を失い、主要な重臣を失うなど苦境に立たされていました。しかし、後醍醐天皇と新田義貞は比叡山に籠城し、強力な財力と兵力を背景に再起を目指していました。

戦闘の経過

戦闘が始まる少し前の9月中旬、足利の小笠原貞宗が軍勢3,000余騎を率いて近江に侵入しました。新田義貞と脇屋義助はこれに対抗し、瀬田川で貞宗の軍に攻撃を仕掛けました。この戦闘は激化しましたが、最終的には貞宗が勝利を収めました。

貞宗はその後、さらなる攻撃に備えて鏡山に陣を移しましたが、新田軍の果敢な攻撃は続き、貞宗は再度撃退しました。折しも、京都では比叡山の勢力に対抗するために足利方の派兵が議論されており、その結果として9月末には大規模な増援が送られました。

その後、両軍は29日、草津市の伊岐代と馬場で戦闘を開始しましたが、新田軍は敗北し、追撃を受けて壊滅的な打撃を受けることとなります。この戦いでは、足利方の武将田代顕綱が勇敢な戦績を挙げ、戦場での戦功を誇示しました。

戦いの影響

近江の戦いは、建武政権にとって致命的な打撃となり、その後の降伏へとつながっていきました。10月に入ると、和泉国や伊予国で小規模な戦闘が続くものの、足利側には影響を及ぼさず、建武政権は消滅する運命にありました。1336年10月10日、後醍醐天皇はついに投降し、これにより建武政権は終焉の時を迎えました。その後、新田義貞は後醍醐の皇子を伴って北陸方面へ退き、引き続き抗戦を続けることになりました。

伝説と創作

近江の戦いにまつわる伝説や創作も存在し、『太平記』の中では、佐々木導誉が建武政権への偽りの投降を行い、その後の戦局を有利に進める様子が描かれています。このようなエピソードは、導誉の大名としての存在感を強調するために創作されたもので、歴史的事実とは異なる視点からの物語を作り上げています。

このように、近江の戦いは建武政権崩壊の背景となる大きな出来事であり、その後の日本の歴史に多大な影響を及ぼしました。

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