近江鉄道モハ9形電車

近江鉄道モハ9形電車

近江鉄道モハ9形電車は、かつて近江鉄道に在籍していた電車の一形式です。この車両は、制御電動車としてクハ1208形と編成を組み、2両編成で運用されていました。1990年12月27日に廃車となり、その生涯を終えています。

概要

モハ9形は、1963年に実施された鋼体化改造によって誕生しました。元々は、1928年に導入されたデハ1形という電車でした。近江鉄道が電化区間を拡大し、直流1500Vへ昇圧した際に導入された車両です。このデハ1形を種車として、西武鉄道のクハ1214またはクハ1215の車体を流用し、台車や主要な機器はデハ1形から引き継ぎました。この改造によって誕生したのがモハ9形です。

モハ9形は、同時に鋼体化改造を受けたクハ1208形と連結され、2両編成で運用されました。しかし、1984年末には既に予備車となっており、1990年12月27日に正式に廃車となりました。廃車後も、車両は解体されずに彦根駅の貨物ヤード跡地に留置され、2004年頃までその姿を見ることができました。しかし、彦根駅東口の開発整備事業に伴い、クハ1208形と共に解体されました。

編成

モハ9形は、常にクハ1208形と編成を組んで運用されていました。

諸元

モハ9形の主な諸元は以下の通りです。

最大寸法: 長さ16,820mm (資料によっては16,910mm)、幅2,715mm、高さ4,165mm
自重: 28.5t (資料によっては34.5t)
台車: KS33L (資料によってはDT12)
電動機: 70PS (資料によっては104kW) × 4個
制御装置: PC101C2 (資料によってはCS5-9+CB8A)
制動装置: AMJ (資料によってはAMA)
製造年月: 1928年4月
製造所: 川崎造船所

これらの諸元からもわかるように、モハ9形は古い時代の技術を色濃く残す車両でした。

前身: 近江鉄道デハ1形

モハ9形の車籍および走行機器の継承元であるデハ1形は、近江鉄道が電化区間を拡大し、直流1500Vへ昇圧した1928年に導入された車両です。当時の親会社であった宇治川電気電鉄部の前身である神戸姫路電気鉄道が開業した際に新造された1形を譲受し、川崎造船所にて住友金属工業のKS33L台車をはじめとする主要機器を組み付け、デハ1形1～9として竣工しました。その後、デハ2～9については荷物室が設置され、デハニ2～9へ改称されました。

1950年代後半になると、車体の老朽化が目立つようになり、鋼体化改造が行われることになりました。この改造によって、デハ1はモハ9に、デハニ2～9はモハ1形1～6およびモハ7形7～8となりました。このように、モハ9形は、近江鉄道の歴史の中で重要な役割を果たしたデハ1形から生まれ変わった車両でした。

まとめ

近江鉄道モハ9形電車は、そのルーツを1928年まで遡る歴史的な車両であり、幾度かの改造を経て、1990年まで近江鉄道の輸送を支えました。廃車後も長らくその姿をとどめていましたが、開発事業に伴い解体され、その姿を消しました。しかし、その歴史は、鉄道ファンにとって、語り継がれるべき貴重な遺産と言えるでしょう。

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