近江銀行

株式会社近江銀行

株式会社近江銀行は、明治時代から昭和時代初期にかけて存在した日本の銀行です。1894年（明治27年）3月、滋賀県下の有力者であった小泉新助、山中利右衛門、伊藤忠兵衛らによって、資本金50万円の株式会社として大阪に設立されました。本店は大阪市に置かれましたが、創業当初から滋賀県との繋がりを重視し、県内の金融機関との合併や買収を積極的に行いました。

設立と成長

近江銀行は、設立当初から滋賀県とのつながりを大切にし、1905年（明治38年）に長浜銀行、1906年（明治39年）には湖東銀行、日野銀行、大津銀行を相次いで合併・買収し、その規模を拡大しました。1911年（明治44年）には、日本銀行から派遣されていた池田経三郎が頭取に就任し、積極的な経営戦略を推進しました。1912年（明治45年）には資本金を400万円に増資し、近畿地方や中国地方に支店や出張所を開設し、中小商工業者向けの金融機関としての地位を確立しました。さらに、1915年（大正4年）には東京支店を開設し、預金・貸出ともに大きく成長。1917年（大正6年）には資本金を1000万円に増資し、シンジケート銀行団にも参加するなど、事業を拡大していきました。

1918年（大正7年）には、滋賀県出身者が多く関係していた東京銀行を合併し、資本金を1500万円に増資。関東地方への営業基盤を拡大しました。1920年（大正9年）には資本金を3000万円とし、関西有数の銀行へと成長を遂げました。しかし、第一次世界大戦終結後、戦時中の好況で過熱していた貸出や投資の引き締めが始まり、金融商品の価格が暴落しました。この影響で多くの金融機関が取り付け騒ぎに巻き込まれましたが、近江銀行も例外ではなく、日本銀行からの特別融資を受けることで一旦は危機を回避しました。

経営破綻

その後も1923年（大正12年）の関東大震災などにより経営不振が続き、1924年には日本銀行の支援を受けて大幅な整理を実施し、業況は一時的に安定しました。しかし、根本的な解決には至らず、不安定な状態が続きました。そして、1927年（昭和2年）に発生した昭和金融恐慌の影響で、取り付け騒ぎが連鎖的に発生し、同年4月18日には3週間の臨時休業に入り、事実上の経営破綻となりました。この時点で、近江銀行は大阪府に本店と12支店、東京都に6支店、京都府に2支店、滋賀県に4支店、神戸市、御影町、広島市、名古屋市にそれぞれ1支店を構えており、特に大阪では大阪市の公金取り扱い銀行の一つに数えられる有力銀行でした。

整理と合併

1928年（昭和3年）1月14日、近江銀行は銀行整理案を発表しました。この整理案では、預金および無担保債権のうち、一口100円未満は全額支払い、100円以上149円48銭までは100円を支払い、残額は切り捨て、149円48銭を超えるものに対しては33.1%を免除し、残額の66.9%を昭和銀行で支払うというものでした。同年1月16日に預金者に整理案が送付され、同年3月28日の債権者集会で和議成立の条件が確定しました。裁判所の認可などを経て、同年4月、近江銀行は昭和銀行（1944年に安田銀行に合併）に吸収合併され、その歴史に幕を閉じました。

近江銀行は、明治から大正にかけて地域経済の発展に貢献しましたが、昭和金融恐慌という未曽有の危機の中で、その歴史を閉じることとなりました。

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