御影町

旧武庫郡御影町：歴史と文化の足跡

町域と歴史

現在の神戸市東灘区御影地区にあたる御影町は、兵庫県武庫郡に属した町です。現在の御影本町、御影中町、御影石町、御影塚町、御影、御影郡家、御影山手といった地域を含んでいました。明治22年（1889年）、町村制施行により、御影村、郡家村、平野村、石屋村、東明村が合併して誕生しました。当初は菟原郡に属していましたが、明治29年（1896年）の郡制施行で武庫郡に編入されました。

平野村の一部であった西平野は、明治8年（1875年）に六甲村高羽と合併しましたが、昭和4年（1929年）に六甲村が神戸市に編入された際に御影町に再統合され、昭和9年（1934年）1月に西平野と改称されました。

御影町は、幾度もの自然災害に見舞われました。昭和9年（1934年）9月には室戸台風による甚大な被害を受け、多くの家屋が倒壊・浸水しました。翌昭和10年（1935年）8月には集中豪雨による下水氾濫が発生し、昭和13年（1938年）7月には阪神大水害により町内一帯が浸水するなど、大きな被害を受けました。

戦後、昭和25年（1950年）に神戸市に編入され、東灘区の一部となりました。町有財産は御影財産区と郡家財産区に引き継がれました。

行政と町役場

御影町の行政区分は、昭和11年（1936年）当時、いくつかの区と大字、小字で構成されていました。区は町村制に基づき、便宜的に設けられたもので、地名の呼称とは直接の関係はありませんでしたが、各地区の通称として、現在でもだんじり祭りの区域割りに見ることができます。

御影町役場は、当初は現在の神戸市東灘区御影本町6丁目5番7号付近にありました。その後、明治24年（1891年）に移転し、大正12年（1923年）には、清水栄二設計による鉄筋コンクリート2階建ての新庁舎が建設されました。この庁舎は、神戸市編入後も東灘区役所として使用され、昭和30年（1955年）に住吉東町に移転するまで、区政の中心となりました。

経済と産業

御影町の産業は、農業と商工業が中心でした。農業は米や麦の生産が主で、自給を満たすには至りませんでした。商工業では、古くから酒造業が盛んで、両京阪神地方をはじめ、全国に販路を有していました。酒造業を中心に、靴、足袋、外箱、下駄、酒樽、石材などの製造も行われていました。

多くの酒造業者や商人、多額納税者が町内に存在し、地域経済を支えていました。また、高島家など、有力な家主もいました。

著名な出身者・ゆかりのある人物

御影町は、多くの著名な人物を輩出しました。政治・経済、学術、文化、芸能など、多方面にわたって活躍した人々がいます。

政治・経済: 乾新兵衛（乾財閥当主）、嘉納治五郎（柔道の父）、伊藤萬助（伊藤萬会長）、大林芳郎（大林組創業家）、村山龍平（朝日新聞創業者）など。

学術: 永宮正治（物理学者）、春成秀爾（考古学者）、和田悟朗（俳人、物理化学者）など。

文化: 八木重吉（詩人）など。

芸能: 高島忠夫（俳優）、マコ岩松（俳優）など。

これらの著名な人物は、御影町の歴史と文化に彩りを加え、その名を後世にまで伝えています。

まとめ

御影町は、自然災害に見舞われながらも、地域住民の努力によって発展を遂げた町でした。その歴史と文化は、現在も神戸市東灘区御影地区に受け継がれ、人々の生活に息づいています。数々の著名人を輩出したことからも、この地の豊かな歴史と文化の一端を感じることができます。

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