近絶滅種

IUCNレッドリストにおける絶滅寸前種

IUCN（国際自然保護連合）レッドリストは、絶滅の危険性が高い生物種を評価・分類する体系です。その中で「絶滅寸前（Critically Endangered）」は、最も危機的な状況にある種に与えられるカテゴリーです。

絶滅寸前の定義

絶滅寸前種とは、個体数の減少が著しく、近い将来における絶滅の危険性が極めて高い生物種を指します。具体的には、過去3世代において、または今後3世代において、個体数が80%以上減少した、もしくは減少すると予測される種が該当します。これは、生物種の存続が極めて危ぶまれる状況であることを示しています。世界自然保護基金ジャパンでは、このカテゴリーを「近絶滅種」と訳しています。

IUCNと他の機関との違い

IUCNでは、生息調査が行われているものの、絶滅した可能性が高い種は、完全に絶滅種とはせず、絶滅寸前種に分類することがあります。これは、確実な絶滅の確認が困難な場合に、慎重な判断を行うためです。一方、バードライフ・インターナショナルは、そのような種に対しては「絶滅した可能性あり(Possibly Extinct)」という独自のカテゴリーを設定すべきだと提言しています。このように、絶滅危惧種の分類には、機関によって異なる解釈や基準が存在します。

日本の環境省が作成するレッドデータブックでは、IUCNの絶滅寸前種に相当するカテゴリーとして「絶滅危惧IA類」が設けられています。しかし、この分類基準はIUCNと完全に一致するわけではなく、日本の固有の状況を考慮した独自の基準が用いられています。そのため、IUCNレッドリストと日本のレッドデータブックの分類が必ずしも一致するとは限りません。

掲載種数

2016年9月版のIUCNレッドリストによると、絶滅寸前種として分類されている動物は2,582種、植物は2,493種にのぼります。これは、地球上の生物多様性が深刻な危機に瀕していることを示す、衝撃的な数字です。絶滅寸前種に指定されている具体的な種については、IUCNレッドリストのデータベースで確認できます。

保全への取り組み

絶滅寸前種に指定された生物は、その存続が極めて危ぶまれているため、早急な保全対策が不可欠です。個体数の減少原因の特定、生息地の保護、繁殖プログラムの実施など、多様な対策が必要となります。これらの対策には、各国政府、研究機関、NGOなど、多くの関係者の協力が不可欠です。

まとめ

IUCNレッドリストの絶滅寸前種は、地球上の生物多様性の危機を象徴するカテゴリーです。その定義、分類基準、そして他の機関との違いを理解することは、絶滅危惧種の保全活動において非常に重要です。私たち一人ひとりが、生物多様性の保全に意識を高め、行動を起こしていく必要があります。絶滅寸前種に関する情報は、絶えず更新されているため、最新の情報を参照することが重要です。継続的なモニタリングと、積極的な保全活動が、未来の生物多様性を守るために不可欠です。

もう一度検索