近鉄モト2720形電車

近鉄モト2720形電車

近鉄モト2720形電車は、近畿日本[[鉄道]]が大阪線の保線作業効率化を目的に導入した事業用電車です。2両（モト2721・2722）が製造され、その特徴的な構造と運用から鉄道ファンにも注目されました。その後、改番と改造を経て、現在はモト90形として活躍しています。

概要

1960年11月2日に近畿車輛で竣工したモト2720形は、定尺レールなどの保線用資材を輸送するために設計されました。2両は背中合わせに連結して運用されることを前提とした片運転台の無蓋車です。

車体

全長20,880mm、最大幅2,646mmという、当時の私鉄向け電動貨車としては最大級の車体寸法を誇ります。車体は全溶接構造の全金属製で、平床構造を採用しています。車体一端には乗務員室が設けられ、切妻の2枚窓と埋め込み式前照灯が特徴です。乗務員室には添乗作業員室も設けられ、細長い側窓が設置されています。屋根上にはパンタグラフが搭載されています。
荷台部分には低い鋼製あおり戸が設置され、車体中央にはレール運搬用の回転台が搭載されていました。

主要機器

主要機器には、元2200系（旧）のデトニ2300形から流用された主電動機や制御器などの電装品が使用されています。台車は2200系（新）から捻出されたものが組み合わされました。

主電動機

三菱電機MB-211-BFが各台車に2基ずつ装架され、吊り掛け式で駆動します。

主制御器

抑速電制付きの三菱電機ABF単位スイッチ式制御器が搭載されています。

ブレーキ

A動作弁によるAMA自動空気ブレーキ（Aブレーキ）が搭載されています。台車の関係で車体シリンダー式となっています。

台車

2200系（新）に装着されていた日本車輌製造D-22形鋼組み立てイコライザー台車が装着されています。

運用と改造

新製以来、大阪線の保線用車両としてレール運搬などに使用されていましたが、1970年3月2日にモト90形（97・98）へ改番されました。1970年代には前照灯の2灯化とシールドビーム化が実施されています。

1982年、近鉄の車両検修体制見直しに伴い、南大阪線車両の五位堂検修車庫への回送用として抜擢されました。この際、ブレーキをHSC電磁直通ブレーキへ、台車を近畿車輛KD-15Bシュリーレン式台車へ交換、荷台のあおり戸や回転台を撤去するなどの改造が行われました。

1995年頃には、流用機器の老朽化が深刻化したため、名古屋線用1800系から改造された養老線610系発生品の近畿車輛KD-60B台車と三菱電機MB-3110A電動機、奈良線800系発生品の日立製作所MMC-LHTB20C電動カム軸制御器などを転用し、機器の更新が行われました。この際、尾灯の変更や添乗作業員室の側窓閉鎖なども実施されています。

台車交換などを経て最大荷重が19tへ引き下げられましたが、2019年現在も橿原神宮前 - 五位堂検修車庫間の南大阪線車両回送を中心に活躍を続けています。2019年4月1日現在の配置検車区は高安検車区です。

参考文献

鉄道史資料保存会『近鉄旧型電車形式図集』、鉄道史資料保存会、1979年
近鉄電車80年編集委員会『近鉄電車80年』、鉄道史資料保存会、1990年
『鉄道ピクトリアル No.569 1992年12月臨時増刊号』、電気車研究会、1992年
『関西の鉄道 No.33』、関西鉄道研究会、1996年
『鉄道ピクトリアル No.727 2003年1月臨時増刊号』、電気車研究会、2003年
藤井信夫『車両発達史シリーズ8 近畿日本[[鉄道]] 一般車 第1巻』、関西鉄道研究会、2008年
中山嘉彦「近鉄車両 －主要機器のあゆみ－」、『鉄道ピクトリアル』954、電気車研究会、2018年

外部リンク

鉄路の名優 電動貨車 - 近畿日本[[鉄道]]

関連項目

* 近畿日本[[鉄道]]の車両形式

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