近鉄400系電車

近鉄400系電車は、近畿日本[[鉄道]]がかつて保有していた通勤形電車の一系列です。本項では、関連性の深い近鉄600系電車（初代）についても解説します。

概要

1969年、奈良・橿原・京都各線の架線電圧昇圧工事が行われました。この際、既存車両の昇圧改造、または新車への置き換えが必要となりました。しかし、大阪万博開催を控え、難波線開業など多岐にわたる設備投資を抱えていた当時の近鉄は、昇圧に必要な車両を全て新造することは予算的に困難でした。また、橿原線の車両限界拡大工事の遅れから、15m級小断面車体を備える吊り掛け駆動の旧型車の一部は、車体を流用して昇圧工事を行う必要がありました。

そこで、15m級小断面車体を持つ既存車両のうち、比較的経年が浅く、主電動機の昇圧改造が可能な車両を選定し、昇圧対応工事を実施しました。運用上の都合から、本線系統で使用する4両編成と、支線区用の2両編成の2つのグループに分けられましたが、電装品の仕様が異なったため、形式も分けられました。前者は京都方からモ600形-モ650形-ク500形+ク550形の4形式で構成される600系、後者は同じく京都方からク300形-モ400形の2形式で構成される400系とされました。

種車

400系・600系の種車は、大阪電気軌道（大軌）時代から使用されていた初代モ400形・モ660形、奈良・橿原・京都各線の主力車であった初代600系（モ600形・ク500形・サ550形）、奈良電気[[鉄道]]（奈良電）からの編入車両モ455形・ク355形・モ670形・初代ク570形・初代ク590形・ク595形など多岐に渡ります。

そのため、種車の構造や窓配置がそのまま引き継がれ、2扉車と3扉車、半鋼製リベット組み立て車体とノーシル・ノーヘッダータイプの全金属製車体が同一形式で混在するという、員数合わせのための苦肉の策であることを示す状況となっていました。

各編成の来歴は以下の通りです。

400系

401F（モ401-ク301）: デボ607→モ607（初代）→モ401（3代）+ クハボ701→ク571（初代）→ク301
402F（モ402-ク302）: デボ613→モ613（初代）→モ402（2代）+ クハボ702→ク572（初代）→ク302
403F（モ403-ク303）: デハボ1102→モ671（初代）→モ403（2代）+ クハボ703→ク573（初代）→ク303
404F（モ404-ク304）: デハボ1103→モ672（初代）→モ404（2代）+ デハボ1101→クハボ704→ク574→ク304
405F（モ405-ク305）: モ641→モ405（2代）+ クハボ651→ク591→ク305
406F（モ406-ク306）: モ650→モ406（2代）+ クハボ652→ク592→ク306
407F（モ407-ク307）: モ661（初代）→モ651（2代）→モ407（2代）+ クハボ653→ク593→ク307
408F（モ408-ク308）: モ663（初代）→モ653（2代）→モ408（2代）+ クハボ601→ク583→ク595→ク308
409F（モ409-ク309）: デハボ1301→モ455（2代）→モ409+ デハボ1302→モ456→ク355→ク309
410F（モ410-ク310）: モ652（初代）→モ452（初代）→モ662（2代）→モ410（2代）+ デボ302→モ402（初代）→ク310
411F（モ411-ク311）: モ653（初代）→モ453→モ663（2代）→モ411（2代）+ デボ310→モ408（初代）→ク311

600系

601F（モ601-モ651-ク501-ク551）: デボ601→モ602（2代）→モ601（3代）+ サボ500→サ501→モ651（3代）+ デボ603→モ603（初代）→ク501（2代）+ デボ600→モ601（2代）→ク551（2代)
602F（モ602-モ652-ク502-ク552）: デボ604→モ604（初代）→モ602（3代）+ クボ502→ク502（初代）→サ502→モ652（3代）+ デボ605→モ605（初代）→ク502（2代）+ モ617（初代）→ク552（2代）
(以下、同様に省略)

主要機器

台車は従来のものが流用され、住友金属工業KS-66L、KS-33Lなどのボールドウィン系の釣り合い梁式台車が使用されました。

主電動機も在来品を改造して流用され、大半は旧600系に由来する三菱電機MB-213AFが搭載されました。

制御器は、従来の三菱電機HLFと東洋電機製造TDK-ES155Aが昇圧に対応できないため、三菱電機AB制御器を新製し、編成の組み替えを含む大改造工事を実施して昇圧に対応しました。

ブレーキはA動作弁使用のA自動空気ブレーキが昇圧後も引き続き使用されました。

運用

400系は1974年春頃、大和西大寺駅-西田原本駅（実質は新王寺駅までの運用）の普通運用に、入出庫の関係も含めて上下2本ずつ設定され、2+2連の運用もありました。橿原線普通の補完として上りは乗車率が高い運用もありましたが、下り2本は加減速度が低いため、後続列車の運用を阻害する事例が多発し、1974年9月のダイヤ改正で回送運転に変更され、設定は消滅しました。

600系は23編成、400系は11編成が改造されましたが、大型車の投入や橿原線の車両限界拡大工事により、409Fを除き1977年までに廃車されました。残った409Fは820系などと混用された関係で、主に生駒線で使用されました。（先行して廃車となった編成と409Fとの連結4連運転は見られませんでした）。大和西大寺駅では出庫時の送り込み運用がよく見られました。

409Fについて

400系・600系のほとんどが戦前から戦後すぐにかけて製造された車両でしたが、409Fのみ製造年が比較的新しかったため、他車が全廃された後も長く使用されていました。

409Fの詳細な来歴については、奈良電気[[鉄道]]デハボ1300形電車を参照してください。

参考文献

鉄道史資料保存会『近鉄旧型電車形式図集』、鉄道史資料保存会、1979年
『鉄道ピクトリアル No.313 1975年11月臨時増刊号』、電気車研究会、1975年
(以下、省略)

関連項目

近畿日本[[鉄道]]の車両形式

もう一度検索