近鉄600系電車 (3代)

近鉄600系電車：養老線を彩った個性派通勤車両

近鉄600系電車は、1992年から近畿日本鉄道（近鉄）が養老線向けに、既存の車両を改造して投入した通勤形電車です。2007年に養老鉄道へ路線が移管された後も、近鉄が所有したまま貸与される形で運用されましたが、2014年に養老鉄道へ譲渡。2018年からは養老線管理機構が所有し、養老鉄道へ無償貸与されています。本稿では、600系だけでなく、派生系列である610系、620系、625系についても解説します。

全系列共通の特徴

これらの系列は、近鉄の標準的な20m級4扉車体を持ちながらも、元々は車齢の高い車両を改造したものです。養老線での運用に合わせ、狭軌への変更や、電動車比率の抑制（またはモーター出力の変更）が実施されました。600系の導入により、養老線では吊り掛け駆動方式や非冷房車が姿を消し、輸送サービスの向上が図られました。

外観上の特徴として、ワンマン運転対応改造や車外スピーカーの設置、増解結の頻度が少ないことから貫通幌が撤去されている点が挙げられます。2013年以降は、新型ATS導入に伴い、一部編成に車上装置が搭載されました。また、2016年以降には、パンタグラフがシングルアーム式に交換された編成も存在します。

車体塗装

当初は近鉄本線系統と同じ、アイボリーとマルーンのツートンカラーでしたが、2008年に惜別イベントが行われ、一旦は姿を消しました。しかし、後には往年の塗装を再現した復刻塗装車が登場し、再び注目を集めています。

各系列の概要

600系

1992年に登場した600系は、様々な出自を持つ車両を改造したグループです。名古屋線1600系や1800系、南大阪線6800系、6000系など、多種多様な車両が種車となっています。改造後は、3両編成（Mc-T-Tc）と2両編成（Mc-Tc）が存在しました。種車が異なるため、標識灯や座席の形状などに差異が見られました。主電動機は6000系からの流用で、当初は出力が異なっていましたが、後に統一されています。2008年からはB更新工事が実施され、内装の更新やトイレの撤去などが行われました。2016年までに一部車両が廃車されています。

610系

1993年に登場した610系は、名古屋線1800系と南大阪線6800系を改造したグループです。2両編成を基本とし、増結用としてク530形が増結されることもありました。主電動機は600系に準じますが、制御器は種車のものをそのまま使用しています。2001年からはB更新工事が実施され、内装の更新などが行われました。2019年には編成単位での廃車が発生し、形式消滅しました。

620系

1992年に南大阪線6000系を改造して登場した620系は、3両編成（ク520形＋サ560形＋モ620形）を組成します。600系や610系とは異なり、桑名寄りがMc車となっています。中間のサ560形は元電動車で、電装解除されています。2009年からはB更新工事が実施され、内装の更新などが行われました。2019年現在、一部編成が現存しています。

625系

2001年に南大阪線6020系を改造して登場した625系は、620系と同様の3両編成を組成します。種車の6020系がラインデリア搭載車であるため、屋根の高さや尾灯の形状などが異なっています。転属時にB更新・ワンマン対応改造が施されました。2018年に廃車となり、形式消滅しました。

アートライナー

600系の一部編成は、様々なテーマでラッピングされた「アートライナー」として活躍しました。「東海じゃらん号」や「ハローキティラッピング電車」、「京急塗装」など、個性的なデザインで沿線を彩りました。

まとめ

近鉄600系電車とその派生系列は、様々な出自を持つ車両を改造し、養老線の輸送を支えてきました。その個性的な外観や塗装は、鉄道ファンのみならず、沿線住民にも親しまれてきました。一部は廃車となりましたが、現在も活躍する車両たちは、養老線の風景に彩りを添え続けています。

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