近隣商業地域

近隣商業地域：住環境と商業活動を両立させるための地域計画

近隣商業地域は、都市計画法において定められた用途地域の一つです。その目的は、近隣住民の日用品の買い物などの利便性を向上させることにあります。住宅地と商業施設が調和して存在できるよう、建築物に関する様々な規制が設けられています。

用途制限：何が建てられるか、建てられないか

近隣商業地域における建築物の用途は、建築基準法で厳しく制限されています。具体的には、以下の通りです。

許可される用途:

住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿：住民の居住を確保します。
兼用住宅：住宅部分と店舗部分を別々に扱い、それぞれの用途規制が適用されます。
店舗：地域住民のための日常的な買い物に対応する店舗です。
事務所：比較的規模の小さな事務所などが建てられます。
ホテル・旅館（ラブホテル等を除く）：宿泊施設として機能します。
遊戯施設：パチンコ店、ゲームセンターなど、比較的騒音や迷惑行為が少ないと判断される遊戯施設が建てられます。
カラオケボックス：地域住民の娯楽を満たす施設です。
劇場、映画館、演芸場、観覧場：文化的な娯楽を提供する施設です。
展示場：展示会やイベントを開催できる施設です。
運動施設：スポーツジムやフィットネスクラブなどです。
公共施設、病院、学校：地域住民のための公共サービスを提供します。
車庫、倉庫：車両や資材の保管場所として機能します。
自動車車庫：自動車の保管場所です。
倉庫：倉庫業を営む倉庫です。
畜舎：家畜を飼育するための施設です。
工場：商業地域における工場の要件を満たす必要があります。
特定行政庁が許可したもの：地域の状況に応じて、特定行政庁が許可した商業施設や業務施設などが建てられます。

許可されない用途:

キャバレー、料理店（接待を主とするもの）、ナイトクラブ、ダンスホールなど：騒音や治安への悪影響が懸念されるため、制限されます。
風俗営業に係る施設（公衆浴場、ヌードスタジオ、ラブホテルなど）：風俗営業は、地域住民の生活環境を著しく悪化させる可能性があるため、制限されています。
商業地域における建築基準法で定める量を超える危険物の貯蔵・処理：危険物の貯蔵や処理は、安全性の確保が不可欠なため、厳しく制限されています。
卸売市場、火葬場、と畜場、汚物処理場、ごみ焼却場など：これらの施設は、都市計画区域内においては都市計画決定が必要となります。

建ぺい率と容積率：建築可能な範囲

近隣商業地域では、建ぺい率と容積率も規制されています。

建ぺい率: 敷地面積に対する建築面積の割合で、通常60%または80%のいずれかとなります。
* 容積率: 敷地面積に対する建築延べ面積の割合で、100%、150%、200%、300%、400%、500%のいずれかとなります。ただし、前面道路の幅員が12メートル未満の場合は、幅員の6/10を乗じた値以下に制限されます。

これらの規制によって、建築物の規模や配置が制限され、近隣住民の生活環境への影響が軽減されます。

まとめ：地域住民と商業の共存

近隣商業地域は、商業活動の活性化と良好な住環境の維持という、一見相反する目的を両立させるための地域計画です。用途制限、建ぺい率、容積率といった規制によって、地域住民の生活環境を保護しつつ、商業施設の立地を促進することで、地域社会全体の活性化に貢献しています。これらの規制内容は、都市計画図などで確認できます。

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