追いつめられて

『追いつめられて』（原題: No Way Out）は、1987年に公開されたアメリカ映画です。舞台はアメリカ国防省という、権力と陰謀が渦巻く場所。重厚なサスペンスと、予測不能な展開が特徴で、観客を最後まで引き込む作品となっています。

本作は、1948年の映画『大時計』をリメイクした作品であり、ハリウッドを代表する名優たちが結集しています。主演を務めるのは、ケビン・コスナー。彼は海軍中佐のトム・ファレル中佐を演じ、複雑な状況の中で正義を追求する姿を見事に体現しています。

物語は、トムがマニラからアメリカに戻る途中に発生した海難事故の救助から始まります。この救助劇がきっかけで、トムは国防長官のデヴィッド・ブライス（ジーン・ハックマン）の目に留まり、ペンタゴンに転属となります。しかし、この転属は、トムにとって運命の歯車を狂わせる始まりに過ぎませんでした。

ペンタゴンで、トムはブライスと愛人関係にあるスーザン・アトウィル（ショーン・ヤング）と再会します。自由奔放なスーザンは、トムにとって特別な存在となりますが、その関係は、やがて悲劇へと発展していきます。ブライスはスーザンの不貞を疑い、彼女を殺害してしまうのです。

ブライスの法律顧問であるスコット・プリチャード（ウィル・パットン）は、トムに捜査を任せ、彼を巧みに陥れていきます。スコットはブライスの信頼厚い側近でありながら、トムの友人でもあるという複雑な立場にあります。実は同性愛者であるという彼の秘密も、物語に陰影を深く与えています。

トムは、事件の真相を追い求めるうちに、次第に自分が殺人犯として扱われるようになっていきます。周囲は彼を疑い、圧力をかけてきます。トムは、自分の潔白を証明し、真犯人を暴くために、知恵と勇気を振り絞り、絶体絶命の状況を乗り越えようとします。

映画には、国防長官や議員、トムの同僚など、様々な登場人物が登場します。それぞれの登場人物が持つ思惑や秘密が、複雑に絡み合い、物語に緊張感と深みを与えています。

監督はロジャー・ドナルドソン、脚本はロバート・ガーランド、音楽はモーリス・ジャールと、ハリウッドを代表するスタッフ陣によって制作されています。彼らの手腕によって、緊迫感あふれる映像と、心を揺さぶる音楽が融合し、作品全体のクオリティを高めています。

『追いつめられて』は、スリリングな展開と、人間ドラマの深さで高く評価されています。レビュー・アグリゲーターサイトのRotten Tomatoesでは、91%もの支持率を獲得し、高い評価を得ています。Metacriticでも、77/100という高い加重平均値を記録しており、批評家からも高い評価を受けていることがわかります。

『大時計』のリメイクとしてだけでなく、ブラッド・ピットの映画デビュー作としても知られる本作は、サスペンス映画史に残る傑作と言えるでしょう。権力、陰謀、愛、裏切り…様々な要素が複雑に絡み合い、最後まで目が離せない、見応えのある作品です。ぜひ、ご覧になってみてください。

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