逃走迷路

『逃走迷路』について

アルフレッド・ヒッチコック監督の『逃走迷路』（原題: Saboteur）は、1942年に製作されたアメリカのスパイ・サスペンス映画で、多くの観客に緊張感と興奮を与えました。主演はロバート・カミングスとプリシラ・レインで、特に自由の女神像のシーンが印象的です。物語は、アメリカの航空機製造会社に勤務するバリー・ケインが、軍需工場への破壊工作の濡れ衣を着せられるところから始まります。

ストーリーの概要

バリー・ケインはカリフォルニア州グレンデールで働いていましたが、彼は突然、同僚から親友であるメイソンに渡した消火器にガソリンが詰め込まれていたことから、意図せず破壊活動の容疑者にされてしまいます。彼の推測によれば、手がかりとなる男フライは、実際には従業員ではなかったのです。

逃れたバリーは、フライが落とした封筒を通じて「ディープ・スプリングス牧場」へと向かいます。そこで出会った大牧場主のトビンは、フライのことを知らないと告げますが、トビンの幼い孫がフライからの電報を渡してきます。その内容は「ソーダシティに向かう」というものでしたが、バリーはトビンの通報により警察に逮捕されます。しかし、護送中に脱出に成功するのです。

その後、バリーは人目のつかない場所に身を潜めていた盲目の紳士ミラー（マーティン）に助けられ、ミラーの姪であるパットは、当局に引き渡そうとするものの、無実を主張するバリーに心を動かされ、彼の逃避行を支援する決意をします。二人はサーカスの一団に匿われながら、徐々に親密な関係へと発展していきます。

やがて、彼らはソーダシティでナチスの破壊工作員たちの連絡場所を発見し、自らもその仲間のふりをしてニューヨークへ向かいます。ニューヨークでは、豪邸で開催中のパーティーに連れて行かれたバリーは、そこでパットが捕らえられていることを知ります。巻き込まれたバリーは、主催者がナチスの工作員であることを周囲に知らせようと試みますが、失敗し地下に監禁されてしまいます。

その後、バリーはスプリンクラーを作動させ、消防車を呼ぶ騒ぎを利用して逃げ出します。新聞報道でブルックリンのキアニーヤードで戦艦の進水式が行われることを知ると、彼はナチの工作員たちの狙いが新造戦艦アラスカの爆破であることに気が付きます。

造船所でフライと激しいもみ合いを繰り広げた後、自由の女神像へと逃げ込みます。その追跡劇は緊張感あふれる展開を見せ、最終的にフライは自らの行動により命を落とす結果となります。

ヒッチコックの工夫

本作には、ヒッチコック特有のサスペンス演出が多く見られ、特にクライマックスシーンでの撮影手法は今でも話題に上ります。また、撮影にあたっては、当初ヒロインにはマーガレット・サラヴァンやバーバラ・スタンウィックの起用が考えられていましたが、最終的にはプリシラ・レインがその役を演じることになりました。

『逃走迷路』は、サボタージュというテーマを扱ったスリリングな物語であり、ヒッチコックのスリラー映画の中でも特に重要な作品となっています。

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