透かし

透かし（Watermark）とは

透かしとは、紙などに光を当てた際に、明るく（または暗く）見える模様や画像のことを指します。これは、紙の製造過程で、金属製の押し型やダンディロールと呼ばれる道具によって、紙の厚さを部分的に変えることで実現されます。透かしの技術は、13世紀のイタリアで始まり、製品の識別や偽造防止のために活用されてきました。

透かしの種類

透かしには主に2つの種類があります。

1. 線画透かし（Line Watermark）:
ダンディロールに張られた針金によって、線状の模様が作られます。
細い線はダンディロールの軸と平行に張られた針金によって、太い線は針金を固定する金網によって形成されます。
パルプ繊維の密度を調整し、光の透過率を変えることで模様を表現します。
線が明確で平行な場合、簀の目紙と呼ばれます。線が不明瞭な場合は、網目漉き紙と呼ばれます。

2. 黒透かし（Shaded Watermark）:
1848年に初めて用いられた技術で、濃淡を表現できるのが特徴です。
ダンディロールの表面に凸凹をつけ、パルプ繊維を圧縮して模様を作ります。
線画透かしよりも複雑な表現が可能で、より深みのある透かしを作成できます。

透かしの歴史と用途

透かしの技術は、13世紀にイタリアで始まり、当初は製品の識別や偽造防止に利用されてきました。その後、切手や紙幣など、さまざまな分野で応用されるようになります。

切手:
切手の透かしは、19世紀から20世紀初頭にかけて一般的で、切手の重要な特徴の一つでした。
王冠や国家の象徴などの模様が用いられ、希少価値のある切手と区別するために利用されました。
現代の切手では、あまり用いられなくなってきています。

紙幣:
現代の紙幣では、偽造防止技術として、透かしが広く採用されています。
白透かしと黒透かしを組み合わせることで、より複雑で高度な表現が可能となっています。
日本銀行券では、肖像の透かしのほか、すき入れバーパターンなどの技術も用いられています。
日本では、すき入紙製造取締法により、政府の許可なく黒透かしを入れた紙を製造することは禁じられています。

印刷物:
印刷物に透かしを施すことで、セキュリティ情報を付与できます。
透かし印刷された書類を不正にコピーすると、透かしが歪んで原本と識別できるようになります。
従来のセキュリティ印刷は専用機材が必要でしたが、近年ではパソコン用プリンタなどでも手軽に実現できるようになっています。

工業製品:
画用紙などの紙製品に、メーカーの証として透かしを入れることがあります。

透かしの識別方法

透かしは、鮮明度によって識別しやすさが異なります。簡単な検査でわかるものもあれば、詳しく調べる必要があるものもあります。紙を濡らすことで透かしを視認しやすくする液体なども開発されています。

電子透かし

音楽、ビデオ、画像などのデジタルファイルに識別コードを埋め込む技術は、電子透かしと呼ばれます。これは、デジタルコンテンツの著作権保護や不正利用防止に役立ちます。

まとめ

透かしは、紙や紙幣、切手などに施される識別用の模様や画像のことで、光を透過させることで視認できます。その歴史は古く、製品の特定や偽造防止のために利用されてきました。現在では、様々な技術が開発され、より複雑で高度な透かしが作られています。紙幣の透かしは、偽造防止の重要な手段の一つとなっており、印刷物の透かしは、セキュリティ対策に活用されています。さらに、デジタル分野における電子透かしの技術も、著作権保護や不正利用防止に役立っています。

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