透明人間 (1933年の映画)

1933年版『透明人間』：科学の狂気と恐怖の影

ジェームズ・ホエール監督、ユニバーサル・ピクチャーズ製作による1933年公開のホラー映画『透明人間』（原題：The Invisible Man）は、H・G・ウェルズの同名SF小説を原作とする作品です。1930年代のユニバーサル・ホラーの中でも傑作と名高く、透明人間という斬新なアイデアは後の多くの作品に影響を与えました。しかしながら、本作は原作小説とは異なる独自性を持ち、独自の解釈で物語を展開しています。

不可視の恐怖と包帯の男

物語は、サセックスのアイピングという村の宿屋に現れた謎の男から始まります。顔は包帯で覆われ、目は黒いサングラスで隠されたその男は、奇妙な言動で周囲を不気味な空気に包みます。宿賃を滞納し、部屋を荒らした挙句、自身の正体が透明人間であることを暴露。包帯を解き、完全な透明の姿を見せた彼は、警官を殺害し、逃走を開始します。

透明化の秘密と狂気

その透明人間の正体は、ジャック・グリフィン博士。彼はモノケインという謎の薬の実験中に、偶然透明化の秘密を発見した科学者でした。しかし、モノケインは彼の肉体を完全に透明化するだけでなく、彼の精神を蝕み、狂気に突き落とします。

グリフィン博士は、師であるクランリー博士の研究所へ戻ります。そこには、グリフィン博士の秘密を知っている元同僚のケンプ博士と、婚約者のフローラ・クランリーもいました。研究所では、グリフィン博士の狂気がますます増していきます。

逃亡と暴走

宿屋から逃走したグリフィン博士は、ケンプ博士を監禁し、協力を強要します。警官を殺害し、強盗を繰り返すなど、彼の行動はエスカレートしていきます。警察は賞金を懸けて彼の逮捕に乗り出しますが、グリフィン博士は巧みに逃亡を続けます。

ケンプ博士は警察官に変装し身を護ろうとしますが、グリフィン博士に見破られ、危機に陥ります。様々な騒動を起こし、列車を脱線させるなど、社会を混乱に陥れるグリフィン博士。そして、最後は納屋に火をつけられ、追い詰められていきます。

死と真実

炎に包まれた納屋から現れたグリフィン博士は、重傷を負い、瀕死の状態でした。彼はフローラに、科学の力が彼を孤独へと突き落としたことを語り、息を引き取ります。死後、モノケインの効果が薄れ、彼の本来の姿が再び現れます。

キャストと製作

本作で透明人間を演じたのは、映画初主演となるクロード・レインズ。当初はボリス・カーロフが予定されていましたが、給与の問題で降板したと伝えられています。特殊効果は革新的で、透明人間を表現するため、様々な技術が用いられました。レインズは閉所恐怖症だったため、撮影は苦労を伴ったそうです。

モノケインとその後

劇中で使用された架空の薬品、モノケイン。その後の続編ではデュオケインと名前を変え、様々なテレビドラマでも、謎の毒薬として登場しています。

ユニバーサル・ホラーの金字塔

『透明人間』は、ユニバーサル・ホラーの中でも高く評価され、多くの続編も制作されました。その革新的な特殊効果と、クロード・レインズの圧倒的な演技は、今もなお多くの観客を魅了し続けています。科学の進歩がもたらす恐怖と、人間の狂気を描いたこの作品は、映画史に残る不朽の名作として、語り継がれていくことでしょう。

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